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スクール特集(正則高等学校の特色のある教育 #10)

「練習は本番のように本番は練習のつもりで」大会に挑み、仲間と成長する軽音楽部

公式大会への挑戦を軸に活動する正則高等学校軽音楽部。今年、2年生バンド「紅玉」が複数の大会で入賞を果たした。音楽を通して、仲間とともに成長する生徒たちの姿を追った。

軽音楽部は「アンプとドラムを使った運動部」

同校の軽音楽部は、東京都高等学校軽音楽連盟*が2007年に発足したことを機に、翌年、同好会から部に昇格した。連盟主催の公式大会も始まり、以来、大会への挑戦を続けている。顧問の木村均先生は連盟の副委員長を務め、全国大会の運営にも携わっている。

「本校の軽音楽部は文化祭で盛り上がるだけのクラブではありません。運動部のように公式大会で結果を出すことを目標に活動しています」。そう話す木村先生の指導の下、現在9バンドが所属。週5日の活動では、バンド練習と個人練習を行っている。

1年生は入部後、「ハイウェイ・スター」「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の課題曲に取り組み、演奏の基礎を身につける。さらに木村先生による座学で音楽理論を学び、夏合宿では全バンドがオリジナル曲の制作に挑む。

「他校では1年生の夏からオリジナル曲を作るところはあまりありません。本校では、作れなければバンドは解散というくらいの気持ちで取り組ませています」と木村先生は笑う。
厳しいようにも聞こえるが、そこには「自分たちの音楽を自分たちでつくる」という同校ならではの方針がある。

▶︎軽音楽部顧問 木村 均先生

さらに、年間約20回行う合同ライブも同校の特色だ。3~4校が集まり、お互いの演奏を披露し合う。照明やPAも入り、ステージ進行などの運営も生徒自身が担当する。主催校となった場合は、他校を迎え入れる準備や案内も任されるため、“演奏する側”以外の経験も積むことができる。

「ある意味、合同ライブは大会よりも教育的な意味合いが大きいですね。他校との交流を通じて、言葉遣いなども変わり、礼節を身につけていきます。私は常々、部員たちに、『軽音楽部はアンプとドラムを使った運動部だ』と言っているんですよ」と木村先生。「また、演奏について他校の先生から講評をいただくことで、自分たちの“今の実力”を知ることができます。合同ライブの積み重ねを通じて、本番でも初めて会うお客様の前で、普段どおりの演奏ができるようになるのです」。

こうした地道な活動が実を結び、昨年は2年生バンド「氷菓」がMUSIC DAYS**で奨励賞(4位相当)を受賞し、FINALに進出した。そして今年は、2年生バンド「紅玉」が優秀賞(2位相当)を獲得。秋の全国大会への切符を手にした。優秀賞は同部にとって初めての快挙だ。さらに「東京都高等学校軽音楽コンテスト」でも決勝に進出し、奨励賞(4~7位相当)を受賞した。3年生のエントリーが多数を占める中、2年生ながら大健闘を見せた。

* 東京都高等学校軽音楽連盟…2007年に発足し、現在では都内の多くの高校が加盟している。主催・共催する主な公式大会は年2回。夏に開催される「東京都高等学校軽音楽コンテスト」は、音源審査やスタジオ審査を経て決勝大会が行われ、上位校は全国大会へ推薦される。秋の「東京都高等学校対抗バンドフェスティバル(東京都高等学校文化祭軽音楽部門大会)」は、高校2年生以下を対象とした新人戦の位置付けで、各校代表1バンドのみが出場できる。

** MUSIC DAYS…2013年にスタートした、高校生(軽音楽部やダンス部)を対象とした、参加費・入場料無料のバンド&ダンスコンテスト。地方予選・本戦を勝ち抜いたチームが、「FINAL(決勝大会)」へ進む。

2年生バンド「紅玉」メンバーへインタビュー

お話を聞いた人
Kさん(ボーカル・キーボード)リーダー
Mさん(リードギター)
Tさん(ベース)
Iさん(ドラム)

Q.軽音楽部に入った理由は?
Tさん 幼稚園の頃からピアノを習っていて、音楽は好きだったけれど、部活動紹介があるまで軽音楽部の存在は知りませんでした。先輩たちの演奏を見て、中でも『ベースがかっこいい!』と思ったのがきっかけです。

Iさん 父がバンドをやっていた影響もありました。僕も高校で軽音楽部を知り、演奏を見て入部を決めました。

Mさん 中学生の頃からバンドに興味があり、軽い気持ちで入部しました。入部してからオリジナル曲を作るクラブであることを知り、ちょっと驚きました。

Kさん 私は軽音狙いで正則高校に入学しました。軽音楽部があり、大会にも出場している学校を探していました。説明会で先輩たちのライブを見て、『ここしかない』と直感しました。私は歌い方に特徴があるので、自分の作ったオリジナル曲であれば、個性が生かせるかなと思いました。

▶︎Tさん

▶︎Iさん

▶︎合同ライブ

Q.夏合宿や合同ライブで得られるものは?
Mさん 1年生の夏合宿では、OBの方から、コード進行の作り方やアレンジの仕方など、リードギターとしてどのような役割を担うのかを教わり、勉強になりました。合同ライブは、他校の先生から講評をいただくことで、自分たちでは気づかなかった課題が見えてきます。

Kさん 1年生の時はバンドを3つ掛け持ちしていたので、夏合宿はとにかく忙しかった記憶があります。合同ライブでは、木村先生のダメ出しが厳しく、でも全部納得できて悔しいから、もっと練習しようと思えます。

Tさん 合同ライブは、コミュニティが広がるのが良いです。また、私たちにとってMUSIC DAYSが多くの人の前で演奏する初めての場だったのですが、合同ライブの経験があったから、普段どおりの演奏ができました。木村先生はよく、「練習でも本番のように、本番はいつもの練習のつもりで」と言っているのですが、そのことを実感しました。

Iさん 1年生の夏合宿では、演奏のアシストをしてもらっているPAさんや照明さんとの関わり方、作法などを先輩から教わったことが印象に残っています。合同ライブは、自分たちのバンドが『他者からこう見られているんだ』というのが知れるのがいいきっかけになります。違う視点からアドバイスをもらえるのも大きな学びです。

Q.バンド活動で一番印象に残っていることは?
Kさん 結成して1か月くらいの頃、一度メンバーでぶつかったことがありました。それぞれ軽音楽への熱量が違っていて、このままでいいのか話し合いました。でも、その時間があったからこそ、お互いの考えを理解でき、今の信頼関係につながっています。

Mさん 僕は最初、Kさんほど大会への思いが強くありませんでした。でも話し合いを重ねるうちに、自分も本気でやろうとスイッチが入りました。あの時が一番の転機になりました。

Tさん 練習の時、木村先生に「前にも注意したのに、全然できていない。もう教えたくない」と怒られたことがありました。ショックだったけれど、「確かに」と思うところもあり、見返すつもりで頑張ったから、力が付いていったのだと思います。MUSIC DAYSが終わった後、「92点だったぞ」と褒めてもらえたのが印象深いです。

Iさん MUSIC DAYSの前は、木村先生やコーチ、先輩方から本当にたくさんの指摘を受けました。「やばい、どうしよう」と不安になりましたが、それだけ期待してもらっているのだと思い、本番では思い切り演奏することができました。

Q.MUSIC DAYSで優秀賞を受賞した時の気持ちは?
Mさん 去年から目標にしていた大会だったので、本当にうれしかったです。シード権が取れたことも大きかったです。

Tさん 初めて審査される大会でした。3年生のバンドが大多数のなか、2年生で受賞できたことが自信になりました。

Kさん 昨年活躍した「氷菓」の後輩として見られ、私の中では賞を取るのが最低ラインだったので、ホッとしました。やっと先輩に追いつけたという感じです。

Iさん 賞を取れたことで、その後の大会へのモチベーションがさらに高まりました。

Q.部活動を通して成長したことは?
Mさん 精神的に強くなりました。厳しい指摘も受け止められるようになりました。

Tさん 私も同じです。中学生の頃は、周りの目が怖かったけれど、人前で演奏する経験を重ね、自信が持てるようになりました。

Kさん 私はしっかり練習をしていても、本番になるとありえないくらい緊張してしまいます。でも、メンバーは「絶対に大丈夫」と、声をかけて支えてくれる。信頼できる仲間の存在が一番大きいです。

Iさん 努力して仲間と一つのものをつくり上げる充実感、仲間の大切さを知ることができました。

▶︎Kさん

▶︎Mさん

厳しい指導の先にある「人間力」の向上

木村先生は、自身の指導について「かなり厳しいと思います」と率直に話す。それは演奏だけではなく、取り組む姿勢や、人前に立つ態度などにも及ぶ。また、木村先生が厳しく指導するのは、生徒たちが打たれ強くなれると信じているからである。「大会前日に、ダメ出しをすることもあります。でも、それは本番でプレッシャーに負けないため。大会での演奏はわずか5分です。練習の段階で苦しい思いをしておけば、本番はその重圧から解放され、純粋に音楽を楽しめる。だから私は、あえて最後まで妥協しません。それに彼らにとって、これまでの大会は通過点でしかありません。さらに成長してほしいし、もっと多くの人を感動させるバンドになってほしいですね」と期待を寄せる。

一方、副顧問の大貫広美先生は、生徒たちの変化をこう語る。「オリジナル曲はKさんが主導して作っていますが、一人では完成しません。だから自然と仲間を思いやるようになります。そして2年生になった今は、自分たちだけでなく1年生を支える姿も見られます。演奏技術を磨き、大会で結果を残すことはもちろん大切です。しかし、本校の軽音楽部が目指しているのは、その先にある“人としての成長”なのです」

音楽を通して仲間と本気で向き合い、困難を乗り越える経験こそが、生徒たちの大きな財産になっている。

▶︎軽音楽部副顧問 大貫 広美先生

<取材を終えて>
大会で結果を残すことは、同校の軽音楽部にとって大きな目標の一つだ。しかし、その過程で生徒たちが得ているものは、演奏技術だけではない。顧問から厳しい指摘を受け、仲間と意見をぶつけ合いながら、一つの音楽をつくり上げていく。そうした経験の積み重ねが、生徒たちを演奏者としてだけでなく、一人の人間として成長させているのだと感じた。

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