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スクール特集(正則高等学校の特色のある教育 #1)

特進・コース別クラスを作らず、全生徒の可能性を伸ばし、進学学力を養う

すべての生徒が「普通クラス」で共に学び、生活をするなかで高い学力と人間力を育み、3年後には、それぞれ志望する大学へ進学。本来の学校らしさを求め、勉強はもちろん、行事や部活動にも熱心な正則高等学校の教育の特色を紹介します。

大学進学に向けて「特進クラス」や「コース別クラス」など成績別、進路別にクラスを編成する学校が多いなか、正則高等学校では、すべてが「普通クラス」。生徒たちは3年間、同じクラスで共に過ごし、確かな学力を身につけ、人間としても成長していきます。そして、4年制大学への現役進学率も85.6%という高さ。「本校は、すべての生徒に伸びる可能性と進路への挑戦を認める学校です」と語る校長の日沼慎吉先生と2人の3年生に、同校の教育や学校生活についてインタビューをしました。

同じスタートラインで学習を開始。ゴールは目指す大学への進学学力

全生徒が同じスタートラインに立ち、3年間を通して、大学へ進学する学力を身につける。そんな教育を実践している正則高等学校。多くの学校が進学実績を上げるために、特進クラスや、文系・理系別クラスを編成して、合理的な学習指導を行うなか、同校は、あえてクラスを等しく設定しています。
「本来、学校というのは生徒が勉強だけでなく、行事やクラブ活動など様々なことに取り組み、学力と人間力を育んでいく場所です。よって本校では、入学時に成績などで区別をすることなく、3年間で伸びる可能性をすべての生徒に公平に与えたいと考えています。そして、卒業時には、一人ひとりが目指す大学へ進学する学力がつけられるよう綿密に指導を展開。私たちは、全生徒に進路への挑戦を認め、そのために必要なサポートをしていきます」と校長の日沼慎吉先生。
同校では、1年次に全員が共通科目を履修し、2年次からは共通科目と、将来の進路や大学の受験内容に応じて選択科目を組み合わせたカリキュラムを導入しています。「クラスも3年間持ち上がりで、学力も、興味や関心も、希望の進路も、それぞれ違う生徒たちが集団を形成しています。こうした多様性が、互いに刺激を与え合い、良い結果をもたらしていますね。現役の大学進学率が85.6%というのも、その一例です」

▶校長 日沼慎吉先生

「何のために学ぶのか」「何のための進学か」生き方の探求につなげた進路指導

成績や進路別のクラスを設けず、全生徒が「普通クラス」で学習しながら、高い進学学力を養っている同校。その要因を、日沼校長は次のように分析しています。
「要因は大きく2つあり、1つはクラスを区別しないことで、わかりやすい指導ができるということ。特進クラスを設ける場合は、最初からカリキュラムが違ったり、指導をする時も、『このクラスはこういうクラスなので…』と、目標の設定なども差別化をしなくてはなりません。しかし、等しいクラス分けであれば、個人の目標に焦点を当てて、指導をすることができます。また、友達同士で励まし合ったり、高め合ったりする環境も作りやすいですね。もう1つは、進路指導のカリキュラムを確立していることです。本校では、『何のために学ぶのか』『何のために進学をするのか』といった生き方の探求につながる指導を1年次から行っています。具体的には、ホームルームや進路セミナーなどでそのような話をしたり、生徒が様々な職場へ足を運んで、働く人から仕事の苦労や喜び、生きがいなどを聞き書きする『体験学習』を実施したり…。また、長崎と沖縄へ行き、歴史や平和などについて学びならが、自己の生き方を考える『学習旅行』も取り入れています。こうした体験を積み重ねて、生徒自らが学ぶ意味、進学する意味を掴むことが、勉強のモチベーションとなります。学校も受験に向けて、特別講座など、独自の学習指導を実施していますが、やはり当人の意識の持ち方が重要ですね」

学校行事やクラブ活動を通じて生きる力を育成する

同校の教育方針では「学力をつける」ことを重点課題に置き、様々な学びと体験を用意しています。そして、高い学力と共に「進路実現」と「社会で生きる力」をつけることを目指しています。「先に述べたように、私たちは本来の学校らしさを求め、勉強も、行事や委員会、クラブ活動なども大切にしています。こうした活動や体験は、生きる力などの人間力を育んでいきます」と日沼校長は言います。
「5月に行われる体育祭は、全クラス対抗戦で、毎年クラスが団結し、熱い戦いを繰り広げています。なかでも印象的なのは、全員が参加する伝統の大縄跳びです。当然、クラスには運動の苦手な生徒もいますが、どうやったら跳び続けられるか、作戦を考え、みんなで練習して本番にのぞみます。
秋の学院祭(文化祭)は、生徒会最大の行事で、1学期から準備を始めます。これも劇や合唱など、クラスごとに企画を考え、ステージで披露して、グランプリを競います。集大成としての3年生の企画は、なかなか見応えがありますね。文化祭も受験勉強も、一生懸命に取り組むのが、正則の生徒たちなのです」

生徒インタビュー

では、実際に同校の生徒たちは、どのような学校生活を送っているのでしょうか。2人の3年生に話を聞いてみました。

▶写真左:Iさん/右:Oくん

Qまず、正則高等学校の志望理由から教えてください。

Iさん 3年間クラス替えがないこと、行事に対する熱意があること。この2つが理由です。「クラスに合わない友だちがいたら…」と心配がないわけでもなかったのですが、先生から「人のいい面も悪い面も見えるなかで、どうやって接したらいいのかを学ぶことができる」、また、「将来、会社で働く時も、いろいろな人と一緒に仕事をしなければならないのだから良い社会勉強になる!」といった話を聞き、その通りだなと納得しました。実際は、人間関係でそれほど大変に感じたことはなく、3年間同じ仲間と過ごすことができ、とても楽しかったです。
 行事は、学院祭(文化祭)が他校にはない迫力があり、この学校で体験をしたい!と強く思いました。

Oくん ぼくもクラスが3年間同じということ、そして正則には観光メインの修学旅行というものがなく、学習旅行を行っていることに興味を持ちました。2年生の時に長崎と沖縄に行ったのですが、長崎では原爆について、沖縄では壕に入ったりして沖縄戦のことを学び、衝撃を受けました。他にも、様々な体験学習ができるのがこの学校を選んだ主な理由です。

Qお二人は、保育園で職場体験をしたそうですが、その時の感想を!

Iさん 最初は小さい子と遊ぶのは楽しいかな、くらいの感覚で参加したのですが、親の仕事が忙しく、子どもときちんと接していなかったり、しつけができていなかったりということが、保育園で問題になっていることを知り、勉強になりました。

Oくん 小さい子はかわいかったですね(笑)。とはいえ、保育士の仕事は大変で、保育士のなり手が少ないこと、また、保育園自体も不足していることなど、社会問題の実情に触れることができ、貴重な経験となりました。

Q 3年間を通じて、もっとも思い出に残った行事は?

Iさん 私は学院祭が目当てで入学したので(笑)、やはり学院祭です。クラス企画では、メッセージを持たせる必要性があり、私たちのクラスは「言論の自由」をテーマにして、「笑の大学」という劇をベースにアレンジしました。準備期間は、半年。3年間、同じクラスメートで企画を作っているのですが、1年生の時のメッセージと、3年生とでは重みも違い、自分たちの成長も感じることができました。

Oくん 同じく学院祭ですね。ぼくは学級委員長をしていて、Iさんは副委員長なのですが、クラス企画の準備は、学級委員が中心となって行います。まとめ役は大変でしたが、互いを知っている仲間で取り組めたのは、楽しかったです。また、言論の自由というメッセージを打ち出すために、関連したシンポジウムにも参加して学習もしました。結果は、惜しくも準グランプリ。でも、みんなで達成感を共有し、高校生活の最後に、良い思い出ができました。

Q卒業後の進路、将来の夢について教えてください。

Oくん 歴史が好きなので、大学では史学を学びたいです。どうして戦争が起こったのか、そういうことを知りたいし、過去の出来事が、次の世代の教訓になる。それが歴史を学ぶ意味なのかなと考えています。将来の職業は、まだ定まっていませんが、学校の先生に少し関心があります。

Iさん DNAやゲノムについて興味があり、大学で生命科学を学びたいと考えています。2年生の時から、担任の先生に進学の相談をしていました。それから、大学の進路とは全く関係がないのですが、ミュージカル俳優になりたいという夢もあります。

Q最後に、正則高等学校で成長したこと、この学校の良さを語ってください。

Oくん 自分で成長したなと感じるのは、社会について問題意識を持つようになり、ものの見方が深まったことです。授業や体験学習を重ねることで、世の中の小さな出来事にも、問題が隠れていることがわかり、また、社会問題を自分の生き方と結びつけて考えられるようになりました。
学校生活では、バスケットボール部のメンバーだったり、クラスメートだったり、最高の仲間と出会うことができました。勉強も、それ以外のことでも充実した時間を過ごせるのが、正則の良さだと思います。

Iさん 私も学習旅行や学院祭でメッセージを伝えたりする体験を通して、社会問題を自分と関連付けて考えられるようになりました。学校の良さはいっぱいありますが、一番は、学級委員や生徒会中央委員長をしたり、行事や陸上の部活動に励んだり、いろんな経験をさせてもらったことです。自分が大変な時は、友達が支えてくれたし、勉強も周りが頑張っているから、自分も頑張れた。正則は、仲間との絆が深まり、そのことで自分が成長できる学校です。

知識偏重の変則な教育ではなく人格形成を大事にした正則な教育を!

正則高等学校は、今年で128周年を迎えた伝統校です。「当時、3人の創立者は、知識の習得に偏重し、予備校化した教育は『変則』な教育である。人間的にも豊かで広がりのある『正則』な教育が必要であることを主張していました。その精神は今も、脈々と受け継がれています」と日沼校長。
「私たちは、生徒たちを分け隔てなく指導し、大学進学を目指す時には、単に受験勉強を促すのではなく、『何のために、何を学ぶのか』を考えて、進路に向かう環境を作っていきます。そして将来、生徒たちには、知識と科学を正しく使える人に育ってもらいたいですね。大学に行って、さらに勉強を積み重ね、得た知識を『誰のために、何のために使うのか』を考えて行動をする、社会に貢献できる人に育ってほしいと願っています」

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