私立中学

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せいがくいん

聖学院高等学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(聖学院高等学校の特色のある教育 #1)

独自科目で大きく成長! スタートから2年目のグローバルイノベーションクラス

聖学院高等学校では、2021年度より高校から入学できるGIC(グローバルイノベーションクラス)を新設。生徒たちの成長や独自科目の授業を取材した。

聖学院高等学校では、2021年度にSTEAM教育をより強化したGIC(グローバルイノベーションクラス)を新設。STEAMの授業やその成果について、児浦良裕先生(広報部部長・数学科)と山本周先生(情報科・STEAM担当)に話を聞いた。

授業のコアとなるICEモデル

同校では、授業設計にカナダのヤング博士が提唱するICEモデルを採用している。ICEモデルとは、I(Ideas=基礎知識)、C(Connections=つながり)、E(Extensions=応用)の頭文字をとった学習・評価方法。問いを立てることで学びのストーリーを作り、生徒が主体的に学びたくなる学習を成立させ、さらに、その学びを質的に評価できるフレームワークである。

「各教科で、課題解決につながる問い(Extensions)を各単元の中に1つ出すようにしています。例えば、英語で学ぶGICの独自科目Immersion(イマージョン)の授業では、1学期に『変化に対応できる街づくりとは?』という問いを立てて、気候変動や国境を越えた人の移動に適応するサスティナブル・タウンのデザインをしました。各チームで英語のポスターをつくり、英語でプレゼンもしています。2学期は『持続可能な国際貢献とは?』という問いに基づき、様々な企業が取り組んでいる国際支援をリサーチ。学期の最後には、架空の国を支援するプロジェクトをデザインしました。そして3学期は、『真のウェル・ビーイングとは何か?』という問いに対して、Active Book Dialog*の手法を用いて本の輪読とプレゼンテーションを実施。最後に1年間のリフレクションとして、3ページほどのエッセイを書きました。このように、ICEモデルではどのような問いを投げかけるかが重要です。教員の研修も、問いづくりに重点を置いています」(児浦先生)
*読書が苦手な人も、本が大好きな人も、短時間で読みたい本を読むことができる全く新しい読書手法。

▶︎児浦良裕先生(広報部部長・数学科)

GIC(グローバルイノベーションクラス)の独自科目

GICが目指すのは「ものづくり」「ことづくり」を通して世界に貢献できる人の育成。GICでは独自科目として、英語で学ぶ「Immersion」を週3時間、「STEAM」を週6時間、「Project」を週2~4時間、「リベラルアーツ」を週2時間実施している。STEAMとは、情報の抽出・分類・比較するスキルや、課題発見・解決に向けた創造・表現のスキルを育てる教育プログラム。STEAMの授業は、探究・PBL型授業で構成され、3Dプリンターやレーザーカッターなども活用して、ものづくり・ことづくりに必要なツールを学ぶ。児浦先生は今年度、高2のGICを週8時間担当しているが、生徒たちの成長ぶりに驚いたという。

「経済産業省と内閣官房が提供しているRESAS(地域経済分析システム)のデータを活用したコンテストの優秀作品を見せながら、どこがよかったか意見を出してもらいました。これまでだったら『プレゼン資料が綺麗でわかりやすかった』など、表面的なことに目が行っていたと思います。ところがGICの高2は、『この2つのデータを比較しているから、このような結論が出せたのがよかった』『いろいろな角度からデータを取ることは重要だが、その一方で、生の声を集めることも必要なので、その2つをエビデンスとして提出しないとダメだと思う』などの意見が出たのです。高1の1年間で、いろいろなアウトプットをした成果なのだと実感しています」(児浦先生)

「Immersion」では、SDGsをテーマに英語で社会科公共や家庭科を学ぶ。「Project」は、自分で選んだ領域に対する問い・仮説を立てて、実験や実践を行い試行錯誤。そこで得たことをもとに考察し、ものづくり・ことづくりにつなげて研究論文を書いていく。「リベラルアーツ」では、哲学対話をしたり、難解な哲学系の本を読んでディスカッションやディベートなどを行う。

「GICの高2は、疑問に思うことを哲学的にいろいろな角度から考えられる能力もかなり上がったと感じました。例えばリベラルアーツで『○○先生について』というテーマだけで2時間、ずっとその先生に質問し続けることができます。プロジェクトなどで外部の社会人に何か説明する機会があると、アウトプットの力がすごいと言われることも多いです。仕事をさせたら、即戦力になりそうなレベルの子もいます。社会に貢献しようとしている生徒たちの活動を、評価してくれる大人が多いことも嬉しいです」(児浦先生)

▶︎ 山本周先生(情報科・STEAM担当)

様々なアクションを起こす生徒たち

同校では、様々なプロジェクトを立ち上げている。例えば、「聖学院みつばちプロジェクト」は、養蜂活動や蜂蜜を通して「社会と関わる」をテーマに2016年から活動している有志の高校生によるプロジェクトだ。2019年には、同校と深い繋がりのあるタイ山岳少数民族の子供たちが暮らす施設を訪問し、養蜂技術支援を開始した。2020年には、同プロジェクトから「合同会社And18’s」を設立。最近では、GICの独自科目「Project」の授業から生まれた「明日、福プロジェクト」が「QWSチャレンジ」*で採択されるなど、GICの1期生も活発だ。このチームのリーダーは、「合同会社And18’s」の副代表も務めており、様々なことにチャレンジしている。多数応募がある中で、高校生と教員のチーム(生徒2名、教員2名)が採択されたのは、同プロジェクトが初めてだという。
*共創施設「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」が主催する「QWSチャレンジ」は、未知の価値に挑戦するプロジェクトを推進するプログラム。採択されたチームは、渋谷駅直結のプロジェクトスペースを無料で利用できる。

「『明日、福プロジェクト』は、『意識高い系は恥ずかしい』というネガティブなイメージを払拭させるために、意識高い系の代名詞とも言えるコーヒーを使って、意識の高い人が肯定されるような社会を作ることを目指すプロジェクトです。代表の生徒は、チームの活動に厚みを出すためサステイナブルなどに知見のあるImmersion(社会)担当と、テクノロジーを用いてプロジェクトの価値を最大化するために私をさそってきました。彼のプレゼンには高校生が教員にただ助けを求めているわけではなく、本気で自身のプロジェクトを成功させるために共感してくれるメンバーを探しており、彼のコーヒーによるマインド改革から社会貢献に対する熱い思いに参画を決意しました。外部コンテストや他校とのプロジェクトなどに参加すると、他校の子と比べて何が得意なのかわかってきて、自分のここをもっと生かそうとか、もっとチャレンジしようという気持ちが芽生えてきます。アクションを起こし、チャレンジを重ねていくうちに、将来はどの方向へ進みたいかが見えてくるのです。そこへ進むためには、これを勉強しようとか、英検をこのレベルまで達しておこうとか、具体的な目標も見えてきます。アウトプットの機会が多いことが大事ですし、機会が多いほど自分のものになりやすいです」(山本先生)

STEAMの授業を取材

フューチャーセンターで行われていたのは、「Makey Makey」というプログラミング教材を使ったSTEAMの授業(高1)。パソコンと接続して、バナナやリンゴでも楽器として楽しむことができるという「Makey Makey」は、世界中の子どもを発明家にしたいという思いから開発された教材である。生徒たちは「Makey Makey」の説明を聞いた後、おもちゃクリエーター・高橋晋平氏が「新しいアイデアのつくり方」についてTEDxTokyoで行ったスピーチ動画を視聴。その後、ペアワークでアイデアを出し合って作業を進めていく。

一方、高2のSTEAMでは、情報源の信頼度や、高校生として望ましくないテーマ設定など、レポートやプレゼン資料を作成する際に知っておくべきことを学んでいた。例えば、使わない方がよい例として挙げられていたのがマジックワードと呼ばれる言葉。マジックワードは、何かを言っているようで中身がない、曖昧な言葉である。社会人になってから、会議やプレゼンで使っている人も多いので、高校生のうちに知っておけば、より人に伝わるアウトプットができるようになるだろう。

進みたい道へ全力でサポート

STEAMの授業は、自分の興味や得意なことの裾野を広げるためにも大きな役割を果たしていると、児浦先生は説明する。 

「テストの点数を取るためだけの勉強をさせようと思えば、一定のところまでは伸びると思います。しかし、興味や関心の土台が小さいと、高2ぐらいで一気に伸びなくなるケースが多いのです。どの方向に向かいたいかが明確でなく、単純に○○大学へ行くという目標しかないと、模試で点が取れない、D判定だったというだけで、学校へ行きたくなくなってしまう子もいます。本校が目指しているのは、模試でA判定、B判定を取ることではなく、○○大学でこんな研究をしてみたい、社会で誰かのためにこんな貢献をしてみたいなど、生徒自身が内なる賜物(たまもの)を発見して、自分なりのアウトプットをすることです。それが、本校が目指す『Only One for Others』なのです」(児浦先生)

生徒自身が選んだ進路については、実現できるように全力でサポートしている。

「数年前、東大に合格できる学力がある子が、東大ではなく海外大学へ行きたいと言いました。海外大学に通うための学費は、家計にかなりの負担をかけます。そこで、何が何でも上位で合格して奨学金を取る作戦をあれこれ考え、最終的にはペンシルバニア大学に合格して、奨学金も取れました。進学実績については、数字の多さがよい結果の指標とは限りません。一般入試で複数受験すれば数字をかせぐことはできますが、生徒が希望する進路に関係ない数字を出す必要はないと考えています」(児浦先生)

「ものづくり」の機材を揃えたファブラボ

STEAMの授業で使うレーザーカッターや3Dプリンターなどの機材を揃えたファブラボは、授業以外でも使用できる。山本先生が放課後に授業の準備などをしていると、フラッとやって来る生徒も多いという。

「私はだいたいファブラボにいるので、『作っていいですか?』と言う子には『自由にどうぞ』と言います(笑)。私が3Dモデルを制作しているのを見て、鉄道好きの生徒は、鉄道模型の標識をさらっと3Dプリンターとレーザーカッターで作りました。そういったものを作って文化祭で販売して、3Dプリンター用のフィラメントを買いましょうという提案もあります。本校の教員は、前向きな姿勢で自分から楽しんでいるので、それを見て生徒たちの活動も広がっているのでしょう」(山本先生)

希望者が参加する土曜日の特設授業GIL(Global Innovation Lab)では、様々なワークショップを通して汎用性の高い思考力を養成。SDGs 基礎、プログラミング、データサイエンスなどに関するワークショップを実施している。

「STEAMやGILの準備など、私自身もものづくりを楽しんでいます。ものづくりに興味がある子と一緒に、いろいろなことをやってみたいです。受け身ではなく積極的な姿勢で、授業やいろいろなプロジェクトに参加していく子に、ぜひ本校に来てほしいです」(山本先生)

<取材を終えて>
高2のSTEAMを取材した際、立って授業を受けている生徒がいた。児浦先生に理由を聞くと、午後の授業は眠くなるので立って受けたいと本人が言ったそうだ。立っていた方が、頭が活性化されるとのことで、実際に彼は活発に意見を出す生徒だという。立った状態でノートパソコンの位置がちょうどよくなるように、机の上に置く台も自分で用意している。大手IT企業などで、生産性の向上などからスタンディングワークを取り入れるところが増えているが、授業で取り入れているのは初めて見たのでとても印象的だった。

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