スクール特集(目黒日本大学高等学校の特色のある教育 #3)
付属校の強みを活かしながら 難関大学の現役合格を目指す「特進クラス」
日大進学を目指す「N進学クラス」とさらに難関の大学を目指す「特進クラス」を設置している目黒日本大学高等学校。今回は「特進クラス」にフォーカスし、初年度の様子と2年目の試みを取材した。
2019年、日出高等学校から日本大学の付属校として新しいスタートを切った目黒日本大学高等学校。国公立や難関私立、医歯薬系の大学の現役合格を目指している「特進クラス」では、どのような学習指導が行われているのだろうか。広報部長の天野正貴先生と、高2の生徒(1期生)に話を聞いた。
特別課外講習を実施し、学力上位層の引き上げへ
「特進クラス」の学習状況について、天野先生は昨年度に実施した進研模試(ベネッセ総合学力テスト/7月・11月・1月に実施)の結果を踏まえ、次のように話す。
「国公立、難関私立大学の合格ラインにいる学力上位層は一定数いるものの、11月は7月に比べると、成績が落ちてしまいました。そこで再度、模試に向けての取り組みを見直すことにしたのです。まず、偏差値がどれだけ付くと、この大学の合格圏に入るという明確な表を作成し、目標点数の設定をしました。そして、各生徒がどのゾーンにいるのか、この生徒は教科のどの部分を伸ばせばよいのかなど、学年及び教科担当の教員が集まって情報を共有し、模試を分析。それをもとに、一人ひとりに応じた指導を行っていきます。
本校では、生徒たちの問題解決力を育成するために、PDSA(Plan-Do-Study-Adjust)サイクルの積み重ねをしているのですが、この模試の取り組みも同様です。目標点数の設定→教員間で情報を共有→模試の対策→反復演習というサイクルを回すことで、1月には最上位層が増え、全体的な学力も上げることができました」
▶︎広報部長 天野正貴先生
今年度からは、学力上位層のさらなる引き上げを目指し「特別課外」を導入した。「国語、数学、英語の各教科において学力習熟度の高い生徒を選抜し、放課後の1時間を利用して講習を実施します。指導に当たるのは、難関大学受験指導の経験が豊富な教員、そして、東京大学や医学部の学生たちがチューターとして入ります。
内容は、教員が一方的に講義をするのではなく、ある課題やテーマに沿って生徒たちが主体的に討論や論述をする中で思考を深め、解決する学習スタイルを採用。教員やチューターは、ファシリテーターとしてアドバイスをし、口頭試問練習や論文指導などを行います。『特別課外』は、自分の力で難問に挑み、答えを導く。そんな生徒同士の共有の場になればよいと考えています」
自ら探究学習に取り組む生徒たち
「特進クラス」の教育の特徴は、まず、英語教育を特化していることだ。ネイティブの教員がホームルームを受け持ち、体育や情報の授業を行う「イマージョン教育」を実施するなど、授業以外でも英語に触れる機会を多く作りだしている。また、オンライン英会話や短期~長期の留学プログラムも充実している。
各教科の学習は、小テストや課題プリントなどを利用して基礎の徹底を図り、同時に1年次から大学入試問題を解くなど発展的な内容にも取り組んでいる。
また、1年次は7限目を特別授業に設定し、生徒たちは自分が必要とする学びを選択。自学自習の定着を図っている。2年次からは、文系、理系別のクラスとなり、文系クラスは、国公立大学の受験に向けて7限目に「理科演習」の授業を実施。また、理系クラスも理科2科目で受験が必要な生徒を対象に理科講習を行う。
特進クラスの1期生について、天野先生は「想像していた以上に自ら探究する生徒が多いと感じている」と話す。「特に学力上位層の生徒は、学習習慣が確立し、今回の休校期間も、自宅で課題プラスアルファの勉強をしていましたね。今後も、生徒がより探究を深めていけるように、副教材や難関大学の類題などを活用した学びを提供していきたいと考えています。
本来であれば『特別課外』を4月から実施する予定でしたが、コロナによって、その他の行事を含め延期となりました。7月の模試で、これまで以上の結果が出るのではないかと期待していたのですが、こちらも中止になりました」
ちなみに同校では、休校期間の対応として4月に各教科の課題を自宅へ配送、動画も各生徒のタブレット端末に配信した。加えて5月は、ビデオ会議アプリ「Zoom」を利用したオンラインホームルームや二者面談を実施。緊急事態宣言が解除されると、6月から分散、時差登校を開始。登校日以外は、Zoomを使って双方向型の授業を行い、6月29日から、全校生徒による通常登校となった。
特進クラス1期生へのインタビュー
昨年、特進クラスに入学した生徒たちは、これまでどのような学校生活を送ってきたのだろうか。2人の生徒にインタビューを行った。
Sさん 特進クラス2年生 (文系)
Sくん 特進クラス2年生 (理系)
Q 特進クラスの学習に関する感想を教えてください。
Sさん 英語教育に惹かれてこの学校に進学したのですが、コミュニケーション英語、英語表現、英会話、どの授業も面白いです。ネイティブの先生がホームルームをしてくださるなど、日常的に英語でコミュニケーションを取れる環境もいいですね。
昨年の夏休みは、ケンブリッジ大学のサマープログラム*に参加しました。英語力の高い生徒が多く、刺激を受けました。自分ももっと勉強しようと思いました。また、日本とは違う大学の雰囲気を感じられたのもいい経験でした。
Sくん 数学の授業で、大学の過去問が出され、みんなでチャレンジしたのが印象に残っています。2年生になると授業の難易度が上がり、復習の時間配分が大変になりました。でも、周りの仲間も頑張っているので、自分も頑張ろうと思える雰囲気が特進クラスにはあります。苦手な分野は学習支援センターに行って個別にプリントもらい、克服するように努めました。
*全国の日本大学付属高校生(1~3年)を対象に、年に2回、ケンブリッジ大学で約2週間の研修を実施。試験をクリアした生徒が、各学校から1~3名参加している。
Q 休校期間はどのように過ごしましたか?
Sさん 各教科とも課題がたくさんあったので、毎日、取り組んでいました。配信の授業動画以外にも、自分で調べなくてはいけないことがたくさんあって大変でした。学校の課題以外では、英検やTOEFLの勉強をしていました。
Sくん 僕も毎日、計画を立てながら課題をしていました。1コマ50分×6時間の授業に合わせて課題が組まれているので、1日さぼると取り返すのに苦労をします。授業の動画は、1回見ただけではわからない時もあったけれど、何度も見られる点はいいなと思いました。
Q 学校が再開しました。今後やりたいこと、将来の夢を教えてください。
Sさん オンライン授業は便利ですが、学校で受ける対面授業の良さを改めて実感しました。2学期からは探究学習として、ゼミワークを行います。私は経済学のゼミに入り、お金の循環について研究をするのが楽しみです。また、7限目の特別課外も始まり、志望校に近づけるように自分を高めていきたいです。
将来の夢ではないのですが、このコロナ禍で経験したこと、当たり前に思っていたことが覆されてしまったことを将来プラスに変えていくためにも、今は勉強をしなくてはいけないと思っています。自分の勉強が未来に役立つと信じて頑張っていきたいです。
Sくん クラブは英語部に所属しています。それに加えて、男子フットサルの同好会を立ち上げたので早く活動をしたいですね。理系を選択したのは、コンピューター関係に進みたいから。卒業後は海外大学への進学を考えています。実はこの春、ケンブリッジ大学のプログラムに参加する予定だったのですが、コロナで中止となってしまいました。この悔しさをばねにしたいと思っています。自分には休校期間も自宅で勉強できる環境がありましたが、世の中にはそうでない人もいます。感謝の気持ちを忘れずに目標に向かって頑張ります。
教員がチームになって、一人ひとりを指導する体制へ
目黒日本大学高等学校としてスタートを切って2年目。今後の展望を天野先生は次のように語る。「実は新しい学校になったからと言って、何か特別なことを始めたわけではありません。オンライン英会話や海外留学、またICT教育や探究学習など、今、非常に注目されていますが、本校では以前から取り入れ、実践をしています。今後は、これまで積み上げてきた経験を活かしながらブラッシュアップしてきたいですね。
『特別課外』は新しい試みですが、先に述べたように、模擬試験対策など、やるべきことを教員がチームになって徹底し、一人ひとりの生徒に対して適格かつタイムリーに指導を行っていきます」
現在、「特進クラス」の生徒は、日本大学へ内部進学するための基準をほぼクリアしているという。「国公立大学を受験する場合は、日本大学と併願することが可能です。生徒たちには、日本最大級の総合大学の付属校という強みを活かしながら、さらなる高みを目指して頑張ってもらいたいですし、学校も全力でサポートしていきます」
<取材を終えて>
今回は、特進クラスの1年間を振り返る取材だったが、特化した英語教育や探究学習など先進的な教育が既に「当たり前のように行われている」ことを改めて認識した。また、どの学校もそうだが、コロナによって様々な活動が滞り、同校でも1年生から準備を進めていた選択制の海外修学旅行が中止になったという。他にも、精神的なストレスなどもあったと思われるが、インタビューをした生徒は、コロナ禍の経験を糧にしたいと語り、力強さを感じた。今後、どのような進路を歩んでいくのか、成長する姿を見てみたいと思う。
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