スクール特集(サレジアン国際学園高等学校の特色のある教育 #3)

専門知識を持つ外国人教師が授業!グローバル人材育てるインターナショナルコース
サレジアン国際学園高等学校のインターナショナルコースには、多様な生徒が在籍し、外国人教師が生徒主体の授業を展開している。国際社会で活躍できる力を養う同コースを取材した。
同校は、「本科コース」と「インターナショナルコース」のコース制を設け、後者は英語習熟度でアドバンストグループ(AG)とスタンダードグループ(SG)の2つのグループに分け、授業を展開している。今回はインターナショナルコースの特色について、募集広報部部長の尾﨑正靖先生に話を聞くとともに、AGで学ぶ高入1年生に授業の様子などをインタビューした。
全教科でPBL型授業を実践。AGはデュアル・ディプロマ・プログラムを導入
「本校は、教育目標に『21世紀に活躍できる世界市民の育成』を掲げ、それを実現するために、全ての教科において、PBL(Project Based Learning)型の授業を実践しています。PBLは、正解がひとつではない問いに対して、生徒自ら最適解を導き出す学びのスタイルです。従来の授業のように教師が一方的に教えるのではなく、生徒同士でディスカッションをするなど、主体的に学び合いをします。これからの社会は、知識を習得するだけでなく、得た知識を活用する力が求められます。よって本校は、アウトプット型の授業を重視しています」と、尾﨑先生は話す。特にインターナショナルコースでは、急速に変化するグローバル社会に対応できるよう、批判的思考力や、効果的にコミュニケーションする能力の育成にも力を入れているそうだ。
インターナショナルコースは、多様なバックグランドを持つ生徒と教師陣で、活気ある学習環境を形成している。なかでもAGは、英語、数学、理科、社会、情報の主要教科を、それぞれの専門知識を持つ外国人教師(IT:International Teacher)がオールイングリッシュで指導し、全体の7割が「英語で学ぶ」授業となっている。SGも、週8時間の英語の授業をオールイングリッシュで行っている。ちなみに同校には、24人のITが在籍し、全員が専門教科の修士号と5年以上の教師の経験を持っている。
また、AGは高1の3学期から、西オーストラリア州教育省と提携したデュアル・ディプロマ・プログラム(DDP)を実施している。DDPとは、国内の学校に通いながら、海外校のカリキュラムも同時に履修し、2つの国の卒業証書(デュアル・ディプロマ)を取得できるプログラムのこと。サレジアン国際学園高等学校と西オーストラリア州の高校卒業資格(WACE:Western Australia Certification of Education)を得ることで、より海外大学進学のチャンスが広がる。
インターナショナルクラス(AG)の高入1年生にインタビュー
この春、公立中学校を卒業し、同校のインターナショナルコース(AG)に進学した生徒に、授業の様子や今後の目標などを聞いた。
お話を聞いた生徒さん
Tさん インターナショナルコース(AG)1年生 中学まで公文と英語教室に通う。
―この学校とインターナショナルコース(AG)を選んだ理由を教えてください。
主に2つあります。1つは、自分の進路に合った高校を選びたかったことです。私の将来の夢は、海外に出て、世界の問題を解決することです。それには英語力が必要ですし、また、海外大学の留学を考えた時、一番早くチャンスを掴めるのがサレジアンだと思いました。また、西オーストラリア州の卒業資格が取れるのも魅力でした。
2つめは、学校の雰囲気がとても良かったことです。生徒は明るく活発で、学校生活を楽しんでいると感じました。
▶︎Tさん
—授業の特色、また印象に残った授業を教えてください。
どの授業もディスカッションが多いです。私はもともと自分から発言するタイプでしたが、英語でディスカッションをした経験がなかったので、最初は躊躇していました。でも、グループで話し合いをしている時に、周囲から「あなたならどう思う?」と声をかけてもらい、意見を言っていたら徐々に話せるようになりました。中学からの内進生はディスカッションに慣れていて、他人の意見も尊重して聞いてくれるので、発言がしやすいです。
面白くて印象的だったのは理科の授業です。各グループでトピックを決め、考察したことを5分間のスライドにまとめて発表するという学習でした。私たちのグループは「月経症状を軽減するのに最も効果的な運動の種類は何か」を研究しました。他には、食事のバランス、森林伐採、海面上昇などのトピックがありました。
どの教科も必ず、アウトプットがあります。数学も前半は先生が配ったプリントの問題を解き、後半は生徒が解説をします。私も何度かトライしましたが、みんなの前で解説することで、より理解が深まりました。
—反対に、戸惑った授業はありましたか?
歴史の授業は、少し戸惑いました。中学の頃から歴史は得意教科でしたが、それは知識問題ができていたからで、先生が教えてくれたことを覚えるという学びでした。でも、サレジアンでは最初の授業から「ベルサイユ条約を作り直すとしたら、どんな内容にしますか」という問いが出され、先生は前提の説明はしてくれたものの、板書は一切ありませんでした。そして、グループごとに調印国が割り当てられ、その国の立場で条約の内容を考えました。
私たちのグループは、一番交渉が難しいドイツでした。その後も、「第一次世界大戦が終わった後に第二次世界大戦が起きた理由は何か」、「第2次世界大戦を回避する方法はあったか」などのテーマで、ディスカッションをしました。歴史も知識を教わるだけでなく、それを自分たちで掘り下げる学び方があることを知りました。
―AGに進学して身についた力や、成長したことを教えてください。
成長したと思うことは3つあって、1つは自分の意見を文章にする力です。サレジアンは思っていたよりもレポートなどの課題が多く、それをこなしているうちに書く力がつきました。2つめはそれと関連し、自分の考えを文章化することで思考力も高まったと思います。3つめは英語力です。授業で英語を話す機会が多く、それがトレーニングになり、言葉の選び方などレパートリーも増えました。
―今後、挑戦したいことはありますか?
英語の会話力を高めることです。英語を使ったディスカッションはしているのですが、実は日常会話はあまりしたことがありません。AGには英語をネイティブのように話す生徒もいるので、授業以外でも、自分から話しかけてみようと思います。
—AGを志望している受験生にメッセージをお願いします。
初めは英語の授業環境に緊張するかもしれませんが、先生も生徒も助けてくれるので心配いりません。また、どんな意見も尊重してくれるから「自分がこんな発言をしたら周りにどう思われるか」などと気にしなくて大丈夫です。
入学まで準備をするならば、英語でエッセイを書く練習をしておくと良いと思います。また、これまでに習った専門用語、たとえば生物だったら「細胞分裂」は英語で何と言うのかを調べておく。外国人の先生は日本語で説明をしてくれないので、予習しておくことをお勧めします。
国際色の豊かなAG。SGは海外留学プログラムが充実
今年度、同校には約40名の生徒が入学した。そのうちインターナショナルクラスのAGは約20名で、半数以上は帰国生が占めるが、Tさんのように公立中学校から進学した生徒も数名いるという。
「中学で良い成績を修め、その上でもっと英語力を高めたい、海外大学の進学も視野に入れて学びたい。そう考え、AGに興味を持つ受験生が増えています。私たちはAGにおいて、いわゆる日本的ではない教育を行うことで、生徒の力を伸ばしていけると確信しています。最初は、学習環境の違いから戸惑うこともあるかもしれませんが、みなでサポートをしますし、本校はカトリックミッションスクールであり、他者に寄り添うことを大切にしています」と、尾﨑先生は言う。
「SGに関しても、オールイングリッシュの英語授業の他に、iTime(総合的な探究の時間)やロングホームルームの活動を、AG生と一緒に英語で行っています。また、高1の3学期から3、6、12ヶ月間の海外留学プログラムも用意しています。渡航先はアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで、希望者は英検準2級以上、2年次に進級できる成績をクリアすれば、全員参加することができます。
ただ、本校には、AG生やIT(外国人教員)が多数在籍していますので、日常的に英語に触れられる環境があり、必ずしも留学をしなくとも、学内で英語力を向上させることが十分可能です」。なお、AG生が留学を希望する場合は、DDPでの留学となり、西オーストラリア州の姉妹校に限定される。
このように同校のインターナショナルコースは、AG、SGそれぞれに特色のある教育を行い、グローバル社会で活躍できる人材の育成を目指している。
<取材を終えて>
同校のインターナショナルコース(AG)は、国際学級と称して英語教育に特化しているケースとは一線を画し、多様な生徒たちが英語を使って学問をするクラスだ。授業を見学した時も、自主的に発言をしたり、生徒同士で議論をしたり、とてもアクティブだった。デュアル・ディプロマ・プログラムも導入し、Tさんのように、海外を目指している人には最適な学習環境だろう。
▶︎募集広報部部長 尾﨑正靖先生