スクール特集(関東国際高等学校の特色のある教育 #8)
入学時に「生徒カルテ」を作成。高校1年から進路を見据えた指導を展開
高大連携ブリッジ授業が好評。今年度は順天堂大、桜美林大との新たな高大連携をスタートさせた。外国語科では23年度入試からイタリア語とスペイン語も加わる。副校長・黒澤眞爾先生に取材した。
“夢を叶える”プログラム、高大連携ブリッジ授業
関東国際高等学校は、高大接続を積極的に進めており、年々、高大連携ブリッジ授業(高2・3年対象)を実施する大学を増やしている。大学進学を「夢を叶える第一歩」とする同校。高大接続によるブリッジ授業は、生徒たちに夢の第一歩を与えるプログラムとして同校が実施している取り組みだ。
ブリッジ授業とは、同校または大学で、授業やゼミを受講するという同校独自のプログラム。高校生のうちから、大学での学びをリアル体験することで、生徒それぞれが、自分の進路を明確にすることができる。しかも、同校は約30の大学と高大接続を結んでいるため、生徒たちに与えられる選択肢が実に多いのも特徴だ。これほど多くの大学と高大接続を実施し、授業に連結させている学校は類を見ない。2022年度は新たに順天堂大学、桜美林大学と高大連携の協定を締結した。
▶︎副校長・黒澤眞爾先生
高校がやるべきことは生徒の進路保証
同校はこの取り組みを10年前からスタートさせ、ブリッジ授業に参画する大学を増やしてきた。この実績について、同校の副校長・黒澤眞爾先生は「最初から、高大接続のブリッジ授業の結果を求めて継続してきたわけではなく、生徒の進路を確実にするために、長年かけて積み上げてきた結果です。何より私たちが大切にしているのは生徒たちの進路保証。学校側は、生徒の将来を考え、その道筋を作ってあげなくてはいけない。高大接続のブリッジ授業は、10年以上かけて、生徒の進路に結びつくようになってきたのです」と語る。大学の中には、事前に本や論文を生徒に読ませ、授業後にレポートを提出させる課題を出してくるところもあり、そのレポートに対するアドバイスや評価が、生徒たちの学力に反映している。また大学で授業を受けることで、大学生活の雰囲気を感じたり、自分が進むべき道を見つけたりと、生徒たちが得るものは大きい。「ブリッジ授業を行っている大学に指定校推薦で進学することも可能です。推薦枠を取得できなくても、大学で学んだことをまとめて提出することで評価されることもあります」と黒澤先生。
総合型選抜、学校推薦型選抜中心の進路指導
同校の進路指導は、総合型選抜、学校推薦型選抜を中心に据えている。
「生徒はそれぞれ個性が違い、みんな豊かな才能を持っています。英語が得意な生徒もいれば、数学が好きな生徒もいるし、体育に秀でているという生徒もいるでしょう。自分の得意分野を伸ばし、その生徒の力に見合った大学を見つけてより学びを深めていくことが、生徒の将来に繋がります。本校が総合型選抜、学校推薦型選抜を薦めているのは、生徒の才能は教科の成績だけでは測れないと考えるからです。生徒に適した進路を見極めることが何より大切だと思っています」と黒澤先生。
教師が生徒ひとり一人の学力や目標を把握し、生徒と保護者が学力を客観的に見たり進路目標を定めたりできるように、同校は入学時から『生徒カルテ』を作成している。
「これをもとに担任と生徒及び保護者が面談を重ねます。第一志望の合格に必要な学力や検定などを具体的に提示しつつ、担任と教科担当教員、さらに進路対策室員が協同して、生徒それぞれの進路対策スケジュールを作成します。生徒は、この対策スケジュールに沿って、入試の準備を進めていく。これにより、教師たちもやるべきことが可視化できるわけです」
同校は、高校3年間教育ゆえに、1年次から進路対策をしっかりと固めておくことが重要だ。高校1年のときから生徒それぞれに合ったプランを立てて進路指導を行なうことで、生徒たちは学校生活を楽しみながら、進路目標に向かって学ぶことができている。
後期の指定校推薦枠の設定
また同校は、秋の指定校推薦による進路決定以外に、後期(12〜翌年1月)にも指定校推薦枠を確保している。難関大の総合型選抜に挑戦した生徒は、その結果次第で、後期の指定校推薦枠を利用することができる。
【指定校推薦枠・前期・後期あり】
桜美林大学 教育探究科学群
順天堂大学 国際教養学部
東洋英和女学院大学 国際社会学部
清泉女子大学 地球市民学科
立命館アジア太平洋大学
23年度外国語科にイタリア語、スペイン語コースを新設
生徒の個性を尊重する同校は、普通科(文理コース・日本文化コース)に加え、外国語科も人気だ。英語、中国語、ロシア語、韓国語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語に加え、23年度から、イタリア語、スペイン語のコースが新設され、ヨーロッパの言語も学べるようになった。これにより外国語科は、9コースに。授業時間は週5〜8時間、ネイティブ教員が基礎から授業を実施し、日常会話レベル到達を目標に学習していく。また同校の「世界教室」(国際的な教養を身につけるプログラム)による世界の提携校との交換留学、オンライン交流も積極的に取り組んでいく。「イタリアは、エンリコ・トジ校との交流がありますし、何よりヨーロッパ文化の中心に位置する国ですから、語学以外にも学びは多くあるはずです。スペイン語は大学との親和性が高い。本校と高大連携を結んでいる大学だけでも、上智大学、神田外語大学、清泉女子大学など、スペイン語を学べる大学はあり、進路にも繋がるでしょう」と黒澤先生。
学校が良質な学習環境と将来に繋がるシステムをしっかり作っているからこそ、生徒たちは安心して、高校1年から自分の将来を考えながら目標に向かって学びを積み重ねていくことができる。何より、生徒の個性を大事にし、個々の力を伸ばす学習システムが確立されている同校だからこそ、高大連携のブリッジ授業も成功しているのだろう。高大接続や大学受験に新しい風を吹かせてくれそうな関東国際高等学校。今後もグローバルな視点からの改革に大いに期待したい。
<取材を終えて>
高大連携、ブリッジ授業など、同校のさまざまなプログラムは決して最初から紐づけられていたわけではないそうだ。「生徒のためにやってみよう」と思った教育プログラムの数々が、点から線へと繋がっていったと黒澤先生は語っていた。とても明るく楽しくインタビューさせていただいたが、これだけ多くの高大連携、指定校推薦を決めるまでは多くの苦労があったと思う。その苦労の甲斐あって、高大連携ブリッジ授業は、生徒それぞれが自分の進むべき道を明確にし、総合選抜で難関大学への合格者を出すほどになったのだ。今後、多くの学校が高大連携を増やし、ブリッジ授業のような進路プログラムに力を入れていくだろう。そのとき、関東国際高等学校の成功は、大きな影響力を発揮するのではないだろうか。