スクール特集(関東国際高等学校の特色のある教育 #7)
高大接続型の指導で、一人ひとりの希望に沿った大学進学を実現
関東国際高等学校は、高大連携ブリッジ授業や、生徒数を超える指定校推薦枠を活用した進路指導などを実施し、生徒一人ひとりが希望する進路の実現を目指している。副校長の黒澤眞爾先生に話を聞いた。
大学の授業を受講する「高大連携ブリッジ授業」
同校は、大学進学を「夢をかなえるための第一歩」と位置付け、高大接続を意識した学習及び進学指導を行っている。その一つが、「高大連携ブリッジ授業」だ。これは同校の生徒が大学に出向き、学生と一緒に授業やゼミを受講するという取り組みで、10年以上にわたって実施している。黒澤先生によると、現在は提携校をはじめ、約30の大学(学部)からブリッジ授業の協力を得ているという。大学の中には課題として、事前に本や論文を生徒に読ませ、授業後にレポートを提出させるところもあり、そのレポートに評価やコメントをもらって、生徒の成績に反映しているそうだ。
黒澤先生は「ブリッジ授業を通じて、生徒たちが大学の学びを具体的にイメージすることができます。また『自分も大学に進学して、こんな学びをしていきたい』『このレベルまで学力を上げていきたい』と目標を明確に持つことができ、受験勉強のモチベーションも高まっていきます」と話す。
「ブリッジ授業を行っている大学には、指定校推薦枠で進学することも可能です。推薦枠から外れた場合でも、授業やゼミで学んできたことを大学に提出し、評価をしてもらえます」
高大連携ブリッジ授業は、前期(5~7月)と後期(11~1月)に分かれ、前期が3年生、後期が2年生対象となり、ほとんどの生徒がいずれかの授業に参加をしているそうだ。昨年度は新型コロナウィルス感染症予防対策として、オンラインで実施された。今年度の前期は下記の大学で、オンラインと一部対面による授業が行われる予定だ。
▶︎副校長 黒澤眞爾先生
●青山学院大学コミュニティ人間科学部
●亜細亜大学都市創造学部
●桜美林大学ビジネスマネージメント学群
●神田外国語大学グローバル・リベラルアーツ学部
●杏林大学総合政策学部
●順天堂大学国際教養学部
●上智大学総合グローバル学部
●玉川大学理工学部/文学部(英語教育)
●中央大学国際経営学部/理工学部
●津田塾大学総合政策学部
●立命館アジア太平洋大学
など
国内初の東南アジア3言語による高大7年一貫教育を展開
同校は「普通科」と「外国語科」の2つの科を設置し、普通科は「文理コース」と「日本文化コース(日本語が母語ではない生徒対象)」、外国語科は「英語コース」と「近隣語各コース」があり、それぞれの進路目標に沿った学習が行われている。
文理コースでは、英検準2級以上を取得し、一般選抜だけでなく、学校推薦型選抜や総合型選抜によって進学をすることを目標に設定している。そのための学習サポートとして、勝浦研修施設を活用した進学合宿や、長期休暇の進学講習、また7,8時間目に各種検定、小論文対策講座などを設けている。
英語コースは、英検2級以上を取得し、英語力を生かした大学進学を目指している。英語の授業は習熟度別クラスに編成して行い、7,8時間目は希望進路に応じて英検や留学対策、小論文などの選択制の授業を実施。また、国際交流や長期留学のプラグラムも多数用意している。さらに英語を使って海外大学を目指す生徒を対象に「海外大学留学クラス」を設置し、TOFELやIELTSの対策をはじめ、留学に必要な学習指導を行っている。
近隣語各コースには、中国語、ロシア語、韓国語、タイ語、インドネシア語、ベトナム語の6つのコースがあり、各言語ともネイティブ教員と日本人教員による学習体制を整備。英検に加え、各言語の検定試験の指導や、現地研修、長期交換留学のプログラムも実施している。
さらに2020年に、神田外語大学と東南アジア3言語(タイ語、インドネシア語、ベトナム語)における「高大連携協定」を締結し、国内初の高大7年一貫教育が実現することになった。「神田外語大学にはアジア言語学科があり、これまでも本校とは、大学見学や高大連携ブリッジ授業などのプログラムを行ってきました。そして、両校が見据えているのが、これから確実に訪れるアジアの時代に、活躍できる人材を育てていくことです。その思いが一致し、共同のカリキュラムを取り入れることになりました」と黒澤先生は経緯を説明する。
今後、同校では、グローバル社会で必要とされる統計処理能力、経営学の基礎的知識が習得できる科目を追加する予定だ。神田外語大学からはアクティブラーニングによる特別な英語の授業の提供、同大に進学が決まった生徒への学習サポート、履修科目免除などが検討されている。
約半数の生徒が指定校推薦で進学
同校の大学進学の特色は、大半の生徒が、学校推薦型選抜(指定校)や総合型選抜で進学をしていることだ。それを支えているのが、生徒数を超える大学(学部)の指定校推薦枠である。
「その推薦枠も、普通科と外国語科では大学で学ぶ内容も違うので、はっきりと区分しています。学校推薦型選抜や総合型選抜で受験をしていくには、早い段階からある程度、進路の方向性を決めて準備を進めておくことが大切です。本校では1年次から生徒カルテを作り、保護者を交えて面談などを行っています。また、受験に必要となる英検や論文の対策講座を必修化し、課題探究やプレゼンテーションの学習にも力を入れて、思考力や表現力の向上を図っています」と黒澤先生は言う。
外国語科では、海外の大学に進学する生徒も多い。英語コースはアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、マレーシアなど、近隣語各コースでは、自分が学んだ言語の国へ留学し、韓国やタイなどには指定校推薦枠のある大学もある。
【普通科】
指定校推薦枠
●青山学院大学 法学部/総合文化政策学部
●立教大学 文学部
●法政大学 経済学部
●学習院大学 文学部
●関西学院大学 法学部/文学部
●成蹊大学 法学部/理工学部
●成城大学 経済学部
●明治学院大学 法学部
●武蔵大学 経済学部
●東京電機大学 未来科学部
●東京都市大学 理工学部
●工学院大学 先進工学部
など
【外国語科 英語コース】
指定校推薦枠
●上智大学 国際教養学部
●青山学院大学 地球社会共生学部
●中央大学 国際経営学部
●学習院大学 文学部
●成蹊大学 文学部
●津田塾大学 学芸学部
●立命館大学 国際関係学部
●関西学院大学 国際学部
●武蔵大学 人文学部
●東洋大学 国際学部
●学習院女子大学 国際文化交流学部
●神田外語大学 外国語学部
●立命館アジア太平洋大学 国際経営学部
●獨協大学 外国語学部/国際教養学部
●明治学院大学 国際学部
など
【外国語科 近隣語各コース】
指定校推薦枠
●上智大学 総合グローバル学部
●青山学院大学 地球社会共生学部
●中央大学 文学部
●立教大学 異文化コミュニケーション学部
●法政大学 国際文化学部
●学習院大学 文学部
●立命館大学 文学部
●関西学院大学 国際学部
●武蔵大学 人文学部
●東洋大学 文学部
●神田外語大学 外国語学部
●立命館アジア太平洋大学
●獨協大学 国際教養学部
●延正大学(韓国)
●バンコク大学(タイ)
など
同校では普通科、外国語科を合わせて、約400人の生徒のうち、約半数の200人が指定校推薦で第一志望の大学へ進学。また、毎年50人前後が海外大学へ留学をしている。
最後に黒澤先生は、生徒たちの進学指導について、次のように語った。
「本校は、生徒一人ひとりを大切に育て、一人ひとりの進路を真剣に考えている学校です。たとえ入学時に偏差値がそれほど高くなかったとしても、本校の学習体制に沿って学びを重ねていけば、希望の進路を実現することが可能です。どの生徒にも未来があり、可能性があります。私たちはそれを引き出し、伸ばしていくために、全力でサポートをしていきます」
<取材を終えて>
同校は、高大連携が今のように注目される10年以上も前からブリッジ授業を実施し、また、大学受験の方法を学校推薦型選抜や総合型選抜に舵を切るなど、常に時代の先を見据えた教育活動を行っている。そして、正直驚いたのが国内外を含め、指定校推薦枠の多さだ。学校推薦型選抜や総合型選抜の受験には、個別の対応が必須だが、同校の強みはそこにこそある。生徒一人ひとりに対する指導の手厚さが際立っているのだ。今後も、進学実績を着実に伸ばしていくことだろう。