スクール特集(横浜高等学校の特色のある教育 #1)

次の時代へ進む「シン・横浜高校らしさ」を追及! 2026年度から新制服
2020年度から共学校となり、「あなたらしく、あたらしく。」をキャッチフレーズに進化を続ける横浜高等学校。2026年度から導入される新制服を取材した。
共学校となった初年度から当初の予想を大きく上回る女子生徒が入学し、2025年度は全校生徒が2800名を超えるまでになった横浜高等学校。「21世紀を生き抜く力」を基本コンセプトとして新時代に合わせて進化を続ける同校は、2026年度に新たな制服を導入する。新制服制定への経緯や制服の詳細について、教頭の館山和央先生と学校生活検討部制定品検討チームの先生に話を聞いた。
2020年、男子校から共学校に
共学化前の同校は、長年にわたり高校野球界の強豪として知られていることもあり、運動部に力を入れている「ザ・男子校」というイメージが強かったかもしれない。2020年度に共学校となってからは、女子生徒の明るさや活発さに圧倒されながら学校生活を送っていると館山先生は語る。
「共学化前は、ここまで女子が増えるとは予想していませんでした。共学化初年度から男女比はほぼ4:6で、1期生からずっと女子の方が多いです。女子が多い理由としては、1期生が流れを作ってくれたことが大きいと思います。1期生として、新しい学校をつくっていきたいという思いや、新しい学校づくりに携われるという期待感を持って入学してくれたのでしょう。ところが、1期生は新型コロナの影響で入学式の翌日から休校となってしまいました。女子生徒の入学、オンライン授業、1学年27クラスという、これまで経験したことのない事態が同時に進行し、手探りで初年度を乗り越えました」(館山先生)
共学化初年度は、コロナの影響で行事を思いきり楽しむこともできず、広報活動も十分にできなかった。しかし、コロナが落ち着き、文化祭が一般公開できるようになり、修学旅行も実施できるようになると、生徒たちが活発に活動している様子が伝わり、2024年度は1,100人を超える新入生を迎えたという。
「共学化してから6年目を迎えましたが、まだ野球部などの運動部が強いとか男子校だったというイメージが強い人も多いかもしれません。共学化するにあたり、進学実績を上げていきたいという目標も立てました。実際に、お茶の水女子大学をはじめとする国公立大学や難関私大、海外大学への進学実績も積み重ねてきています。『横浜高校からお茶の水女子大!』と聞いたら、びっくりしますよね(笑)。それぐらい変わってきているのです。ここまで大きく変わった本校をより多くの人に知っていただきたいという思いもあり、新制服を制定しました。生徒が増えた要因は、駅から近い、校舎がきれい、自由な空気感など、いろいろあると思います。多種多様な生徒がより自分らしく学校生活を送れるように、今後も進化していきたいです」(館山先生)
学ランを進化させた黒ブレザー
新制服のデザインは、外部関係者から同校に対するイメージの聞き取り、在校生へのアンケート、メーカーとの打ち合わせやコンペなど、様々な過程を経て完成した。
「本校が打ち出したいイメージだけでなく、生徒たちのニーズも意識してデザインを検討していきました。2024年度の文化祭では、4タイプのマネキンを置いて人気の高いデザインの調査なども行っています。アンケートの結果では、本校のイメージとして水色や青が多かったので、当初ベージュメインで考えていた冬服のスカートは、陰ひだに青を入れて夏服との統一感も出しました。夏服のスカートはとても人気があったので、柄を継承しています。意外だったのが、青の次に赤が人気だったことです。イメージにばらつきが出るという懸念もありましたが、オプションとして好みで選べるようにしています。本校は共学化に対応するために校舎の改修などを進めてきましたが、4階建ての新校舎が2023年度に完成しました。赤のスカートは、新校舎棟のレンガタイルを彷彿とさせるデザインになっています」(学校生活検討部制定品検討チーム教員)
同校では、「社会で活躍できるグローバル人材の育成」をミッションの1つとして掲げ、ニュージーランド海外研修やターム留学を行い、現地7校の提携校と友好関係を深めている。ニュージーランドから交換留学生の受け入れも行っていることもあり、男子の学ラン(詰襟)を今の時代にあったスタイルに進化させ、グローバル人材を育成していきたいという思いもあったという。
「外部からの声も含めて、長い間本校のイメージとしてあった学ランを残してほしいという声も多くあります。学ランファンにも納得してもらえる形で進化させたいと考え、冬正装のブレザーには、現行制服と同じ生地のシャドーグレンチェックを採用しました。他校のブレザーは紺や濃紺が多く、黒のブレザーというのはほとんど見かけません。唯一無二という横浜高校らしさを作っていきたいという思いもあり、ディティールにもこだわり、襟元にはゴールドステッチが入っています。男子校時代に人気だった黒いセーターも進化させて、カーディガンという形で黒ニットをオプションで用意しました。
ブレザーは襟のデザインも男女それぞれ特徴的で、学年識別できる校名バッジには、本校の生徒である誇りを持ってほしいという思いも込めています。甲子園での応援グッズにも使われ、本校のイメージカラーとなっているカナリアイエローも、ステッチやスカートの柄など、細かいところに使われているので、ぜひ探してみてください」(学校生活検討部制定品検討チーム教員)
「シン・横浜高校らしさ」の象徴となる新制服
様々な意見を検討し、サブスカートやスラックス、ネクタイ、リボン、ニットなど、オプションも多数用意して、1年を通して多様なコーディネイトが楽しめる新制服が完成した。
「全校生徒2,800人となると本当に多種多様な生徒がいるので、それぞれが気に入ったものを着用できるような環境を整えたいと考えました。オプションから好きなものを選ぶことができるので、生徒の数だけ着こなしのパターンもあると思います。新制服を撮影するために高2の生徒にモデルになってもらいましたが、『欲しい!』『かわいい!』と言ってもらえたことが嬉しかったです。かなり時間をかけて話し合ってきましたが、中高生に受け入れてもらえるか不安もありました。第一印象としては、それがクリアできたと実感できたので安堵しています。以前から女子のスラックスもありましたが、ブレザーになったのでスラックスともより親和性が高くなりました。ジェンダーフリーも意識して、女子制服、男子制服ではなく、スカートタイプ、スラックスタイプという呼び方にしています。共学校となり、女子の明るさや華やかな雰囲気が加わり、新しくなった本校のイメージがこの制服から広く皆さんに伝わっていってほしいです」(学校生活検討部制定品検討チーム教員)
今回、新制服のデザインを決定するまでの過程では、周囲の力添えも大きかったと館山先生は振り返る。
「本校がどのようなイメージで見られているか外部への聞き取りを行い、様々なご意見をいただきました。そのような中で、周囲の皆さまのお力があって本校があるのだと、改めて実感しています。そして大切なのは、生徒がいるから学校があるということです。生徒たちが明るく楽しく、自分らしさを出して過ごせるように、『あなたらしく、あたらしく。』というキャッチフレーズのもとでよりよい環境を整えていきたいと考えています。その1つである新制服を通して、新しいフェーズに入った『シン・横浜高校らしさ』を皆さんに感じていただきたいです。新制服をはじめ、生徒たちの明るく元気な様子は、本校の公式Instagramで発信しています。学校説明会やオープンスクールの情報も随時更新されますので、ぜひそちらもチェックしていただきたいです」(館山先生)
<取材を終えて>
取材中に下校する生徒たちの姿が見えたが、やはり女子の方が多い印象を受けた。下校の様子からも感じられる変化の大きさは、同校を訪れれば実感できるだろう。校舎の改修や新築も進められ、新しい教育に対応したコモンルームやラーニングスタジオを備えたレンガタイルの新校舎も好評だ。公式Instagramでは、「新制服で1週間コーディネートチャレンジ」なども投稿されているので、ぜひチェックしていただきたい。