スクール特集(女子美術大学付属高等学校の特色のある教育 #6)

「女子美祭」や受験生向けの講習会で活躍!「美術の力」で輝く生徒たち
女子美術大学付属高等学校では、生徒たちが個性を活かして「美術の力」を発揮し、活躍できるチャンスが多数用意されている。10月24日・25日に開催された「女子美祭」の当日に高2の生徒3人に話を聞いた。
「女子美祭」を運営する「鏡友会」の会長にインタビュー
「女子美祭」(文化祭)は「鏡友会」(生徒会)の役員によって運営され、生徒たちが授業で制作した課題作品の展示をはじめ、各クラス・クラブ・委員会・同好会などの発表が行われる。生徒たちは半年前から準備に取りかかり、クラス展示の企画は「鏡友会」の審査を通らないと展示できない仕組みになっている。中高合わせて27クラスのうち、審査を通過できるのは展示が12クラス、校内装飾が3クラスという狭き門だ。「鏡友会」が見る人の立場に立った厳しい審査を行っているからこそ、毎年クオリティの高い展示が実現している。「女子美祭」の顔となるポスターを5作品に絞るのも、「鏡友会」の重要な役目だ。
Tさん(高2 鏡友会会長 内進生)

▶︎Tさん
――「鏡友会」に入ろうと思った理由を教えてください。
Tさん 中1のときに友達が入っていたので、いろいろと話を聞いて興味を持ちました。自分もクラス展示の企画を審査する側になってみたいという気持ちもあって、中2から活動しています。
――「女子美祭」当日を迎えて、どのような気持ちですか?
Tさん 審査の際に安全性もチェックしていますが、企画としてちゃんとできているのかは発表するまでわからない面もあるので本番までドキドキしました。準備期間3日間の最終日に安全管理で各展示をまわったときは、まだ壁が塗られていない場所があったりして不安もありましたが、なんとか間に合ったようでホッとしています。
――クオリティの高い企画について、どう感じていますか?
Tさん 高3が一番すごいので、それを引き継いでいくことは女子美生としてのプレッシャーでもあります。「鏡友会」の役員としての仕事は今年で終わり、来年はクラス企画を審査してもらう側になります。とても楽しみですし、他のクラスに負けないように、みんなでたくさん話し合って頑張りたいです。
――「鏡友会」が担当している「女子美エンナーレ」はどんな展示ですか?
Tさん 女子美生が授業外で作った作品を展示して、来場者に投票してもらう企画です。絵画だけでなく、服やオブジェなどの力作が出展されています。

▶︎「女子美エンナーレ」の会場にて
――「女子美祭」の顔となるポスターは、どのように選びましたか?
Tさん まず、高2の生徒全員(約200人)が課題として提出した作品を、先生方が30作品に絞ります。そこから、ポスター選出委員と女子美祭実行委員、鏡友会のメンバー約60人で5作品に絞り、5作品から全校生徒の投票で1位が決まりました。30作品から5作品に絞るときは、会議などはせずに、30作品を並べて10分ぐらい眺めて、1人2票ずつ投票します。高2の場合、選出するメンバーの作品が30作品の中に入っていることもありますが、自分の作品であることは明かしません。わかると逆に票を入れにくくなるので、明かさないまま決めるのが基本です。
――Tさんのポスターも5作品に残りましたが、制作の過程について教えてください。
Tさん 過去に選ばれた作品を見て、どんな作品が選ばれているかをものすごく研究しましたし、過去に選ばれたものと似た感じにはならないようにもしました。最終的にたどり着いたのは、空を女子美生の仕事着に見立てて、そこから手を伸ばしているようなイメージです。中学生の頃からいろいろ考えていましたが、方向性が決まったのは高1のときで、その案をさらに改良して夏休みに決めました。ポスターは「女子美祭」の顔なので、5作品に残れたことはとても嬉しいです。

「女子美祭」の顔として選ばれたポスターを制作した生徒にインタビュー
「女子美祭」のポスターは、高2の夏休みに全員が取り組む課題だ。生徒たちは各コースそれぞれの制作条件で平面や立体作品を出品し、1位に選ばれた作品は様々な印刷物に利用されて「女子美祭」を盛り上げる。美術科教員、鏡友会などによる選考を経て、約200作品の中から2026年度はOさんの作品が選ばれた。
Oさん(高2 内進生)

▶︎Oさん
――ポスターはどのようなイメージで制作しましたか?
Oさん 女子美の制服はネクタイがシンボル的だと思っているので、ネクタイを並べるところから始めました。並べてみたら、横断歩道に見えてきたんです。横断歩道は毎日目に入るし、通学路にもあって、前に「進む」イメージがあります。1つの方向に進んでいく感じが、「女子美祭」を作り上げるためにみんなが同じ方向に進んでいく感じと合うと思いました。横断歩道からは社会性も感じられるので、社会への発信という意味も込めて描いています。1位を狙うしかないと思っていたので、過去に選ばれた作品をたくさん見ていろいろと研究しました。

――デザインが決まったのはいつ頃ですか?
Oさん ブルーというテーマはかなり前に決まっていましたが、横断歩道の案は夏休み中に1か月かけて考えて、2日で描き上げました。デザイン画を完璧にしてあれば、あとは手を動かすだけです。
――ブルーにはどんな思いがありますか?
Oさん 私は、青に赤を少しとか、寒色にちょっとだけ暖色が入るのが好きなので、色のイメージは早くから決まっていました。私にとって転換期となった作品は、高1で取り組んだ幾何構成の課題です。図形を組み合わせて色合いを作る課題があったのですが、その作品がとても心に残っています。そこから、自分はこんな感じが好きなんだというのが決まってきました。大きな作品で好きなことを表現したいと考えたとき、青を前面に押し出したいと思ったのでメインカラーを青にしました。今日、「女子美祭」のスタッフジャンパーも青だと気づいて、青は「女子美祭」にピッタリだったなと思っています。
――「選ばれる」ために意識したことはありますか?
Oさん 私は引き算のデザインが好きなので、かなり色を絞っています。色は少なければ少ないほどいいと考えていますが、過去に選ばれた作品を見ると中学生は要素がたくさんあるポスターを好むことがわかったんです。選ばれるためにはあまり絞りすぎない方がよいと考え、夏休み中に何回も学校に行って、先生にも相談しました。女子美生は普段から、作品の方向性などに悩んだときにはどんどん先生に意見を聞きます。ポスターに関してもたくさん意見を聞きましたが、先生の意見をすべて取り入れるわけではありません。取り入れるところもありますが、自分の案がいいと思ったら貫きます。
――ポスターが「女子美祭」の顔に選ばれてから、周囲の反応はどうでしたか?
Oさん みんな褒めてくれました。両親や友達も喜んでくれて、同学年だけど名前とかわからない人からもポスターのことで話しかけられたり、先生からも「おめでとう」と声をかけていただきました。そういった声を聞いてとても嬉しかったのですが、夢のような感じでまだあまり実感がありません。今日、来校者の方が私の作品が描かれた印刷物を持っていたりして、自分の絵がいろいろな人に渡っている光景を見たので、やっと現実のこととして感じられるのかもしれません。中1の時から見てきて、選ばれた作品はすごいと思っていたので、5作品に残るのが目標でした。5作品はそれぞれジャンルが違っていて比べようがないので、そこから先の投票は「運」だと思います。ポスターには、クロッキー帳を抱えている人がいたり、スラックス姿の人がいたりするので、ぜひ細かいところまで見てください。
学校説明会などで「JFS」として活動している生徒にインタビュー
同校では今年度から、受験生向けの学校説明会などでスタッフとして活動する「JFS」(J:女子美 F:付属 S:スタッフ)が本格的に始動。中高の各クラス2人ずつ、合計54人が「JFS」として登録され、各イベントをサポートする。生徒による受付や誘導などは他校でも行われているが、同校の場合は日頃の学びを活かして実技講習会のサポートなども行う。「JFS」のメンバーには、女子美生をイメージしたイラストが描かれたクリップを配布。イラストは、同校の卒業生であり非常勤講師でもあり、『別冊マーガレット』の作家としても活躍している漫画家・井田葉子先生によるものだ。「JFS」であることの目印となるように、胸元にクリップを付けて活動している。
Kさん(高2 高入生)

▶︎Kさん
――「JFS」になった理由を教えてください。
Kさん 受験前は、女子美に入りたいと思って説明会や行事に来ていました。今は在校生として迎える側になれたので、女子美の魅力をもっと伝えたいなと思って活動しています。

――これまで「JFS」としてどのような仕事をしましたか?
Kさん 夏休みに受験を希望している中3向けの夏期講習を行ったときに、実技講習の時間にお手伝いに入りました。カッターで鉛筆を削るやり方を教えてあげたら喜んでくれたので、自分が入学する前もこんな感じだったのかなと振り返ると感慨深いです。
――「JFS」になってよかったと思った出来事はありますか?
Kさん 保護者からの質問に答えたときに、「楽しそうですね」とか「ぜひ子どもも行かせたいです」などと言われると、女子美の魅力が伝わったと感じられて嬉しいです。
――美術に興味を持ったのはいつ頃ですか?
Kさん 小さい頃から絵が好きでしたが、絵を習い始めたのは小学校の高学年です。小学生の頃は図工が好きで、図工の先生と仲良くなってアドバイスをもらううちに、いろいろなことができるとわかり、そこから興味が深まりました。
――女子美を受験しようと思った理由を教えてください。
Kさん 通っていた絵画教室の先生から勧められたのが最初のきっかけです。女子美の行事などに参加してみて、在校生と話したりする中で、学校の雰囲気がいいなと思ったので受験しました。
――入学当初は、内進生についてどんな印象を持ちましたか?
Kさん 内進生はのびのびしているなと思いましたが、実は内進生も緊張していることが後からわかりました。最初はお互い緊張していたので、内進生も高入生もそれぞれで集まりがちでしたが、すぐに仲良くなれました。
――この学校のいいなと思うところを教えてください。
Kさん 美術に特化した学校なので、美術以外の教科にも美術が絡んでいて楽しく勉強できます。例えば、「アートイングリッシュ」の授業では、画家の手紙を和訳したり、アート用語や表現、鑑賞方法などをネイティブの先生と一緒に学びます。化学の授業で夏休みにものづくりをしたり、元素記号の特徴をとらえて擬人化したカードを作ったりしました。苦手な分野でも、美術と絡めたら楽しく感じられます。校内も美術に囲まれているので、日々いろいろな刺激があっていい雰囲気です。廊下にも作品が展示されていて、制作に行き詰ったときなどに参考にできたり、常に美術と関われるよい環境だと思います。
――「女子美祭」のクラス企画について教えてください。
Kさん 人手不足のゲーム会社という設定で、来場者にエンジニアになってもらってゲームの開発に携わっていただく企画です。

▶︎クラス企画の会場にて
――将来についてはどのように考えていますか?
Kさん デザインコースで学んでいるので、デザインの道に進みたいです。製品パッケージなど、プロダクトデザインに関心があります。
<取材を終えて>
「鏡友会」の役員は、「女子美祭」のクラス企画やポスターを審査する側として、企業でコンペを実施するような経験ができる。「女子美祭」のポスターに選ばれると、作品が多くの人に見られ、多くの人の手に渡る喜びを知る貴重な経験となる。今年度から本格的に始動した「JFS」は、受付や誘導だけでなく、実技講習会などで「美術」を通して受験生と接する機会がある。3人の話から、それぞれの形で「美術の力」を活かして、楽しく学校生活を送っていることが伝わってきた。















































