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聖学院高等学校

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デジタルパンフレット

スクール特集(聖学院高等学校の特色のある教育 #2)

小さな違和感を学びにつなげる、ゼミ形式のGIC独自科目「Project」

「ものづくり」「ことづくり」を通して、世界に貢献できる人を育成するグローバルイノベーションクラス(GIC)。独自科目の集大成「Project」とは?

2021年度からスタートしたグローバルイノベーションクラス(GIC)では、「ものづくり」「ことづくり」を通して世界に貢献できる人を育成。GIC独自科目の特色やその集大成となる「Project」について、GIC・1年生担任の伊藤航大先生と広報部長の早川太脩先生に話を聞いた。

GICの教育の柱となる4つの独自科目

GICの授業時間数は他クラスと同様だが、独自科目としてLiberal Artsをベースに、STEAM、Immersion、Projectの3つを柱にした教育を展開している。これからの社会は不確実性が高まり、求められる人材も変わっていくことを見据えて独自科目をスタートさせたと、伊藤先生は説明する。

「これまでの社会では、強力な1人のリーダーがいて、その人が指示することを言われたとおりに行える人が高く評価されてきたと思います。ですから、求められていたのは優秀なリーダーやその指示に正確に従える人でした。しかし、不確実性が高まってきた社会では、優秀なリーダーであっても、1人で正解を導けるのかというところに本校は疑問を持ちました。1人のリーダーに従うのではなく、それぞれ異なった成長過程を経た、異なる趣味や志向を持つ人たちが集まって協働した方が面白いものが出来るし、社会にインパクトを起こせる何かが作れるのではないでしょうか。そういった思いから、独自科目はスタートしています」(伊藤先生)

GICの生徒は、自らGICを選択して高校受験または試験を受けて内部進学しているので、グループワークやプロジェクト型学習を中心とした独自科目にも抵抗が少ない生徒が集まっている。しかし、そのような生徒たちを伸ばしていくためには、授業の仕組みや担任の関わり方が重要だという。

「その1例として、GICの独自科目では、テクノロジーを取り入れた授業を積極的に行っています。『ハサミと紙で作りました』というのも、もちろん工作です。しかし、本校ではレーザーカッターや3Dプリンターなどを活用しています。今、社会の最先端で起きていることを生徒たちが体験することで、自分たちがやっていくチャレンジと世界の最先端で起きていることがリンクしていくのです。独自科目を通して、失敗を経験として肯定的に見て、次への成長材料と考えるポジティブさも身につけてほしいと思っています。自分の伝えたいことを伝わるように表現する経験を重ねることも、大きな力となるでしょう。また、自分の力をメタ認知した上で他者の力も客観的に見て、どのようにコラボレーションするとその効果が最大化できるのかを考えることも、重要な力となっていくと思っています」(伊藤先生)

▶︎GIC・1年生担任 伊藤航大先生

出口(大学入試)で必要となる力を入口(高校入試)で評価

GICの高校募集は、国際生(帰国生)入試が英作文と面接、推薦入試が適性検査(英語・思考力)と面接で評価する。

「GICは、出口として総合型選抜での受験、海外大学または国内グローバル系大学などを目指すクラスです。ですから、入口でも思考力と英語力を評価したいと考えています。『ものづくり』『ことづくり』にフィックスできるかを評価するのが、思考力入試です。英語をツールとして使っていくので、英語に対して前向きであることも評価する必要があります」(早川先生)

思考力入試の対策としては、アウトプットの機会をたくさん持つことと、世の中や自分の身の回りに違和感や疑問を持つことが大切だと、早川先生は語る。

「その2つが組み合わさった時に、自分の中で『何かを作りたい』とか『何かを考えたい』という気持ちが芽生えてくると思います。違和感や疑問は、大きなことでなくてもよいのです。例えば、私は中学生ぐらいからずっと『傘はなぜ江戸時代から形が変わらないのだろう』と思っています。そのような小さなことでも、大切にしてほしいのです。アウトプットは、外部コンテストなどで発表するのはもちろんよい機会になりますし、同級生や同学年、保護者の前、友だち同士で発表し合うのもよいでしょう。アウトプットの形は、言葉でなくてもよいのです。自分の考えを外に出す機会を多く持つことで、そこに自分の力があることが感じられると思います。本校の思考力入試は根底がそこにあるので、アウトプットされた表現物からどのような力があるか見たいのです」(早川先生)

▶︎広報部長 早川太脩先生

「A(Art)」を大切にしたSTEAM教育

同校では、STEAM教育の中でも特に「A(Art)」を大事にしていると、早川先生は説明する。

「考えたことや違和感を形にするときには、それを享受する人がいることを考えなければなりません。『ものづくり』や『ことづくり』はサービスにつながっているので、アートの部分が非常に大切なのです。どんなに良いサービスでも、そのサービスに触れる接点(ユーザーインターフェース)が使う人にとって心地よい形になっていないと、ユーザーは満足できないですし、そのサービスを選んでくれません」(早川先生)

「A(Art)」の授業として、1年次には色彩のイメージや視点を体現するために、生徒たちが写真で「色」を集めて「かたち」に起こす、「色のかんかくストレッチ」を行っている。

「色には、様々な意味合いがあります。例えば、信号や道路標識の赤は、危険とか止まれの意味です。自然界の赤にもいろいろな意味があり、赤い花は虫に受粉してもらうために目立つ色になっていたり、ヤドクガエルのように毒がある生物は『僕を食べたら危険だよ』と伝えるために赤くなっています。一方で、ポストは赤いけれど危険ではありません。見た人によっても、いろいろな感じ方があります。自分の身の回りにある色を分析したり、種類分けをするのが色のかんかくストレッチです。これがスモールステップの1歩目で、1年次の最後には、40センチ四方の板を3面つなぎ合わせたボックスを使って空間をデザインします。そこに色や光、音を自分でプログラムして、時間経過と共に色が変わったり形が変わる空間を設計。2年次には、デザインに加えてデータの使い方を学び、提案をする時の見せ方などにつなげます。1年次には『ものづくり』の材料、2年次には『ことづくり』の材料を学ぶという流れです」(早川先生)

独自科目の集大成「Project」

GICの集大成となる科目が「Project」だ。「Project」はゼミ形式で、国際系・社会系・環境系などのテーマから興味・関心に合ったプロジェクトを自分で選ぶ。選んだテーマの中で、自ら課題を設定し、その課題解決に向けて学内外で連携し、協働・研究活動を行う。その成果発表に向けた準備のための「Project Week」を、年2回設定している。

「本校はキリスト教の学校なので、キリスト教を深めていくゼミや、海洋に関するゼミなどがありますが、私は高校生が起業するというゼミを担当しています。『高校生の企業は社会問題を解決する一助となるか』を問いに起業を手段として活動を続けています。自分が疑問に思っていることや、こんなものがあったらいいなとか、不便に思っていることを解決する所からスタートします。それを実際に商品やサービスに落とし込んで、商品開発や販売につなげ、個人事業主として登記をして会社を作るという一連のことを2年間かけて行います。マーケティングやPRなどについては、OBの起業家などを招いて話を聞きます。20人ぐらいで活動しているゼミもありますが、私のゼミは起業に向けてかなり手厚いフォローが必要なので、定員は各学年5人としています」(伊藤先生)

現在高3の1期生には、伊藤先生の起業ゼミで、タイの貧困地域で生産されたコーヒー豆を現地の人と適正価格でダイレクトトレードをして、商品化・販売を行った生徒もいる。

「本校は、タイ北部の山岳少数民族と30年以上にわたって交流を続けています。そのタイにおける貧困へのアプローチとして、彼はコーヒーを開発しました。世の中には、適正な取引が行われていないコーヒーが多くあり、それはある種の搾取になってしまいます。私たちがそれを消費していてよいのだろうか、という疑問を彼は持っていました。タイの人たちにきちんと労働の対価を支払って購入した豆を、日本のコーヒー業者と契約をしてコーヒーにして、自分でデザインしたラベルをつけて販売しました。それだけでなく、彼は『このコーヒーを買って飲むだけで、社会貢献が出来る』という価値を消費者に与えるというスキームまで作ったのです。コーヒーを買うことを通して、揶揄を含んだような表現として使われる『意識高い系』という言葉の潜在的偏見を変えようとしました。事業する側と事業相手のWin-Win関係を作るところで終わってしまいがちですが、彼はそこに消費者を入れて、いわゆる『三方よし』の形を構築したのです」(伊藤先生)

起業ゼミでは、販路も自分たちで見つけてくるというミッションを与えている。

「前述のコーヒーは、最初は校内の保護者会での販売から始まりました。小規模での販売を通して『経営するとはどういうことか』を学びました。その後、共創施設SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)が主催する『QWSチャレンジ』に応募し、採択されたことをきっかけに、多くの方に彼の活動を知ってもらうことができました。ここでの出会いから、福島県双葉町で行われた地域フェスタや、東京都北区のカフェでもコーヒーを販売するに至りました。 販売と共にネットワークの構築にも積極的に取り組んだ結果、高3の始めには合計2000パックを売り切り、今では3年間の総まとめとして探究論文を執筆しています。Projectが他の科目と違うのは、教員自身も答えを持っていないということです。それぞれの教員自身の強みを活かしながら、生徒たちと一緒に伴走していくようなイメージです」(伊藤先生)

GICのミッションは「自分で問いを立てる」

GICでは、与えられた問いに答えるのではなく、自分で問いを立てることがミッションだと、伊藤先生は語る。

「例えば、今起業ゼミにいる高1の生徒は、長くアメリカに住んでいたこともあり、苦くて緑茶が飲めません。それでも、日本人だからお茶を飲めるようになりたいと思っていて、ずっとモヤモヤしています。そこで、緑茶が苦手な人でも飲めるお茶を開発しようと思いつきました。そういった経験を積み重ねていくと、『自分とは何者か』を語れるようになると思うのです。与えられた問いに答えることをミッションとしている学校も多いと思いますが、GICは自分で問いを立てたり、自分の問いを突き詰めることがミッションになっています。自分の問いに対して自分で答えて、それを他者に語ることで、その人の価値が高まっていくのです。それこそが、これからの社会で求められる人材だと考えています」(伊藤先生)

GICの生徒たちには、外の世界に飛び込んでいこうとするマインドが着実に育くまれている。彼らにとって、外部のコンテストやプロジェクトに参加するなど、何かにチャレンジすることへのハードルはそれほど高くないという。

「コンテストなどの招待が届くので私からも生徒たちに提案しますが、『もう申し込みました』と言われることも多いです(笑)。たとえ定期試験や英検などが近くても、コンテストはやめておこうとはならず、どちらも頑張ろうとします。生徒たち自身でいろいろなところにアンテナを張っていますし、チャレンジする気持ちを持っている生徒がとても多いと感じています」(伊藤先生)

自分の中に問いや違和感を持っている受験生にぜひ来てほしいと、早川先生は語る。

「1期生のときは手探りでしたが、1期生での経験や彼らと外部をつないだことなどにより、2期生、3期生には彼らのニーズに対して教員がどんな準備をしたらいいかがかなり見えてきました。もちろん、準備していたこととは別のことをやりたいのなら、そちらに取り組んでもよいです。教員としてはニーズが見えてきたことで、2期生、3期生は、より大きく羽ばたかせることができるという感覚があります。3科や5科の受験勉強をして入学し、教員による一方向的な講義で得たものだけで大学に入るということに対しても、違和感を持っている受験生はいると思います。そのような受験生に、ぜひGICに来てほしいです」(早川先生)

<取材を終えて>
取材した日の数日後は、ある大学が主催するビジネスプランコンテストの締め切りだった。GICの生徒は翌週から中間試験が始まるにも関わらず、コンテストに取り組んでいるという。そのコンテストも、教員が紹介する前に生徒たち自身ですでにエントリーしていたのだ。他クラスの生徒と比べて、何かにチャレンジしようとする気持ちがより強いのは、やはり独自科目での学びによるものが大きいのだろう。初の卒業生となる1期生がどのような分野に進むのか、進路にも注目したい。

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