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せいぶがくえんぶんり

西武学園文理高等学校 

スクール特集(西武学園文理高等学校の特色のある教育 #1)

2年生全員が個人発表! 325人それぞれが考えるSDGs

総合学習の時間を用いて、2年生全員がSDGsをテーマにした探究活動を実施。個人ポスターセッション形式で成果を発表する「総合学習発表会」を取材した。

西武学園文理高等学校の2年生は、2学期から3学期にかけて総合学習の時間を用いて、SDGs(持続可能な開発目標。具体的には、2030年迄に達成すべき17の目標を国連が定めている)をテーマにした探究活動に取り組んできた。2020年2月1日に開催された「総合学習発表会」を取材し、田原友先生(高校2年生副主任)と岡村陽子先生(高校2年生担任)に話を聞いた。

「知る」だけで終わらせず「行動」につなげることが大切

SDGsをテーマにした探究活動とその成果を発表する個人ポスターセッションは、同校で初めての試みである。3年ほど前にSDGsを知り賛同した田原先生は、教員たちに広め、自身が受け持つ社会科の授業にも取り入れてきたという。

「自分が受け持つ社会科の授業だけでは、取り組む生徒が限られてしまいます。もっと多くの生徒たちに取り組んでもらいたいと考えて、SDGsを総合学習の課題にしました。目標は17個あるので、どれかは興味や関心を持てるだろうと思いましたが、実際に選んだ結果を見ると、偏りはあるものの誰も選ばなかった目標はありませんでした。こちらで振り分ける必要もなく、自然にばらけたことには驚きました」(田原先生)

これまでも調べ学習を行ってきたが、グループワークの場合は人任せになってしまったり、積極的にやらない生徒が出てきたりすることもある。そこで今回は、個人で課題に取り組み、個人での発表に適しているポスターセッション方式で発表会を実施した。

「今回の探究活動には2つのねらいがあり、1つは将来やりたいことにつながるきっかけ作り。もう1つは、知るだけで終わらせず、知った後どうすべきか、解決するためにはどうすべきかを考えるステップに進むことです。さらに、実行に移すところまで到達してほしいと思っています。情報化社会となり、様々な情報を手軽に得られるようになりました。しかし、知っただけで行動しなければ、何も変わりません。他人ごとではなく、自分のこととして自分に何ができるか考えて、行動できるようになってほしいです。今回は、知ってから考えるところまでは想像以上にできました。それだけに、そこからどう初めの一歩を踏み出すかが大切。今回の探究活動が、そのきっかけになればと思っています」(田原先生)

▶︎田原友先生(高校2年生副主任)

ポスターセッション形式で2年生全員が個人発表

発表は、生徒一人ひとりによるポスターセッション形式で行われた。多目的ホール1~3の3部屋を使い、2年生325人全員が発表。準備したポスターの前で3分間、聞き手となった他クラスの生徒たちにプレゼンテーションを行う。1人5回ずつ発表し、1回ごとに聞き手が入れ替わる。5回終わったら、最後に発表している様子を動画で撮影。その動画はAO入試などに活用できるポートフォリオに記録するほか「SDGs探究AWARD2019」に全員が応募する。

会場には、イラストを効果的に使ったポスターやカラフルな文字が印象的なポスターなど、生徒たちの個性あふれるポスターが並べられていた。それらのポスターの前で、用意した原稿を読み上げる生徒、時々原稿を見る生徒、最初から最後まで原稿なしで語りかけるように発表する生徒など、発表の仕方も様々。中には自信がなさそうに発表していた生徒もいたが、緊張しながらも3分間しっかりと発表を行っていた。

ポスターセッションを終えた2年生4人にインタビュー

・Yくん(エリート選抜東大クラス 2年生)
発表タイトル「飛ぶのは恥だが役に立つ」

飛行機が排出するCO2が問題となり、ヨーロッパを中心に「飛び恥」(飛行機に乗るのは恥ずかしい)という考え方が広まっている。しかし、ビジネスなどの移動手段として、飛行機が役に立っていることも事実である。そこでYくんは、飛行機を否定するのではなく、路線を選抜するなどの方法でCO2を削減できるのではないかという提案を発表した。

Q.このテーマを選んだ理由やどのような準備をしたか教えてください。

Yくん パイロットを目指しているのですが、国連で飛行機を否定するような発言があり、 「僕の将来はどうなるんだ!」と思ったのがきっかけです。飛行機のよさをわかってもらいたい、そして飛行機がもっとよいものになればいいなという気持ちもありました。インターネットで調べたことや中学生のときに学んだこと、航空系の学科がある大学のオープンキャンパスで聞いた話なども盛り込んでいます。原稿を見ながら話すのは苦手なので、要点だけを準備して、紙は見ないで思っていることをそのまま話しました。

Q.課題を通して学んだこと、発表の感想などを教えてください。

Yくん SDGsには17の目標がありますが、それぞれが独立した課題ではなく、絡み合って影響し合っていると感じました。そして、2030年までという短い期間で達成するのは、かなり厳しいと思います。ですから、発信できる人をもっと増やして、受け取る人を増やすことが必要です。例えば、オーストラリアで起きている山火事は例年より被害が大きく、多くの人や野生動物が犠牲になっています。僕は生徒会長をしているので、英語科の生徒たちからオーストラリアの現状を知ってもらうために、何か活動したいという相談を受けました。高校生からの発信だけでは足りないので、企業や著名人など、いろいろな人が発信して、より多くの人がオーストラリアの現状を知る機会を作ってほしいです。そういった動きが、SDGs全体の環境問題について知ってもらうことにもつながると思います。

・Aさん(普通科 2年生)
発表タイトル「We must actually take action」

Aさんの地元には、泳いでいる魚が肉眼で見えるほど澄んでいて、ゴミ1つ落ちていないほど綺麗な川があった。しかし、台風19号により橋が壊れて、今までに見たこともないほどのプラスチックゴミが流れついてきたという。その光景にショックを受けたAさんが起こした行動を盛り込みながら、海洋のプラスチック問題について発表した。

Q.このテーマを選んだ理由やどのような準備をしたか教えてください。

Aさん 発展途上国では水質汚濁が問題となっていて、私の地元にある横瀬川がずっと綺麗な川のままでいてほしいと思ったのでこのテーマにしました。台風19号の後、横瀬川にゴミがたくさん集まっていたのがショックだったので、できる範囲でペットボトルを拾って、川の様子を写した写真とコメントをSNSに投稿しました。それを見た町役場の方が、みんなでゴミを拾いましょうと呼びかけてくれたのがとても嬉しかったです。10人ぐらい集まって、黄色いベストを着て川のゴミを拾いました。この出来事を通して、発信することで人の心を動かすことができると実感しました。

Q.課題を通して学んだこと、発表の感想などを教えてください。

Aさん 3分は短くて、もっともっと長く話したかったです。川や海に流されたペットボトルの量はとても多く、ポイ捨てされたものだけではないと感じます。ちゃんとゴミ箱に捨てたけれど、台風などでそのゴミ箱ごと流されてしまうこともあるかもしれません。ゴミとして流れ着いたたくさんのペットボトルの中には、自分が飲んだものもあるかもしれないのです。ポイ捨てなどをしていなくても、人ごとではなく、自分にも関係のある問題なのだと思います。まずは、マイボトルやマイバッグを使うなど、自分にできることを確実にやっていこうと、今まで以上に強く思うようになりました。この発表が、みんなも自分のこととして考えるきっかけになってほしいです。

・Yさん(英語科 2年生)
発表タイトル「飢餓をなくすためにできること」

発展途上国の貧しさや仕事がないという現状には、彼らが出荷する作物を先進国が適正な価格で購入していないことが大きく関係している。途上国の生活を改善するためには、先進国の協力が不可欠である。書道が好きだというYさんは、飢餓の背景にあるそれらの問題をとても読みやすくポスターにまとめ、フェアトレードや食品ロスへの取り組みの大切さについて発表した。

Q.このテーマを選んだ理由やどのような準備をしたか教えてください。

Yさん 今まで、飢餓の原因は発展途上国で作物が育ちにくいことだと思っていましたが、私たち先進国が関係していると知ってもっと調べたくなり、このテーマを選びました。発展途上国から多くの作物を輸入しているのに、十分な賃金を払っていないことなどが関係しているのです。インターネットで調べたり、図書室で飢餓に関する本を読んだり、両親や先生に話を聞いて情報を集めました。発表では、飢餓をなくすために、私たちにもできることがあるということを伝えたかったです。

Q.課題を通して学んだこと、発表の感想などを教えてください。

Yさん 発表のとき、ポスターを指さしながら話すのが難しかったですが、字を書くことは好きなので、ポスターを作るのは楽しかったです。飢餓の問題を解決するためには、様々な角度からの取り組みが必要であり、私たち先進国が変わらなければならないと感じました。日本では食品ロスがたくさんあり、それはとても身近なことです。発展途上国の人が食べる分まで、先進国の人が買ってしまうことが飢餓につながっています。私も食べ物を買いすぎないように気をつけたいと思いました。フェアトレードの大切さについても、もっと多くの人に知ってほしいです。

・Tくん(中高一貫クラス 2年生)
発表タイトル「諸刃の刃 プラスチック」

「諸刃の刃」とは、「一方では非常に役に立つが、他方では大きな害を与える危険もあるもののたとえ」である。プラスチックは便利で私たちの生活に欠かせない存在となっている一方で、大量のプラスチックが海に流れ出て海洋生物などを苦しめている。Tくんは、海洋プラスチックの多くがアジアの川から流れてきていることに注目し、自分たちにできることについて発表した。

Q.このテーマを選んだ理由やどのような準備をしたか教えてください。

Tくん 父の実家が鳥取県にあるので、小さいころから夏休みになると帰省して、海に行くのが楽しみでした。しかし、年々海にゴミが溜まってきているのが目に見えてわかるようになり、砂浜にもペットボトルやフィルムなどのゴミが打ち上げられています。なぜそうなってしまったのか、この機会に調べてみようと思いこのテーマを選びました。ポスターに使ったデータは、インターネットや雑誌などで調べたものです。もともと地学や歴史が好きで「ナショナルジオグラフィック」で読んだ海洋プラスチックの特集も参考になりました。

Q.課題を通して学んだこと、発表の感想などを教えてください。

Tくん 「人間も毎週5gのプラスチックを食品などから体内に摂取している」という記事があり、海洋プラスチックが自分の体にも影響していると知り驚きました。プラスチックを食べているという意識などありませんでしたが、自分たちが出しているゴミが自分たちにも影響していたのです。人ごとではないということを、みんなにも知ってほしいと思って発表しました。プラスチックを使うのは仕方ないことですし、ゴミをゼロにはできません。それでも、リユースやリサイクルを意識することで状況は変わっていきます。エコバッグやマイボトルを使えば、使い捨てプラスチックを減らすことができるので、みんなで意識してほしいです。この発表を聞いて、一人でも変わってくれたらいいなと思います。

課題に向き合う姿を見て生徒たちの成長を実感

同校の中高一貫生は、地元企業や市民大学などとコラボレーションした課題解決型学習を中2から中3に行っている。中高一貫クラスの担任をしている岡村先生は、当時を振り返りながら、今回の探究活動での成長ぶりを語った。

「中学生のときは、教員が取材に同行したり一緒に調べたりするなど、手がかかりました。今回も、しっかり指導しないといけないかと思っていたのですが、きっかけを与えてからは、予想した以上に自分たちで積極的に進めていました。私たちが思っていた以上に生徒たちは大人で、社会のことにも興味があるのだと気づくことができ、特に中高一貫生の成長ぶりは感慨深いものがありました。中高一貫生は中学生のときに地域について学び、今回世界に目を向ける学びをしたので、それをまた地域に還元できるように学びを進められたらいいなと思っています。それぞれの地域で学んできた高入生も、国際社会の中で日本に貢献できるような人材になっていってほしいです」(岡村先生)

テーマ選びについては、意外なほどクラスごとの傾向はなかったという。英語科だからといって国際関係を選ぶというわけではなく、生徒それぞれが興味のあるテーマを選んでいる。

「生徒たちが自由にテーマを選んだので、教員が思っていなかった組み合わせもあり、興味深かったです。例えば、ジェンダーをテーマにするのは女子ばかりかと思っていたら、男子もちらほらいました。自分たちには関係ないと、課題と向き合わない生徒もいるかもしれないという懸念もありましたが、そのような生徒はいなかったですね。発表の台本やポスターを作る過程では、『もっとこうしたらいいよ』などと自然に生徒同士でアドバイスして、協力する姿も見られました。そのような様子を見て、本当の学力とは、生徒自身が知りたいと思ったことを生徒同士で共有して、高めていくものなのだと感じています。普段の一斉授業とは違う姿が見られ、教員にとっても多くの発見や学びがありました」(岡村先生)

SDGsをテーマにした探究活動は、今年度の経験からブラッシュアップして2020年度も実施する。取り組む期間は今年度より長い1年間となり、次の2年生にバトンタッチされる。

「今の時代は主体的な学びがキーワードとなり、私たちが子どもの頃と違って知識が身につけばそれでいいというわけではありません。時代の変化も早く、生きていくのは大変だと思います。しかし、今回の探究活動を通して、子どもたちの学ぶ力や生きる力を発見できたので、そういった力を活かして、新しい日本や新しい社会を築いていってくれたらいいなと思っています」(岡村先生)

▶︎岡村陽子先生(高校2年生担任)

<取材を終えて>
同じテーマを選んでいても、同じポスターはなく、同じ発表もなかった。325人それぞれが探究した成果を発表し、それぞれが学んだことを共有し合ったことで、新たな学びや気づきがあっただろう。授業としての取り組みは終わったが、今回の探究活動はここで終わりではないはず。発表会を終えた後、それぞれがどんな一歩を踏み出すのか大いに楽しみだ。

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